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定番マンガ、米社会の変化反映 新ヒロインはイスラム系女子高生
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「スパイダーマン」や「アイアンマン」といったスーパーヒーローを生み出してきた米漫画出版社、マーベルコミックスが11月7日までに、16歳のイスラム系米国人の女子高生が主人公の漫画「ミズ・マーベル」をスタートさせると発表した。
来年1月に読み切りとしてお披露目し、2月から月刊連載する。イスラム系米国人の女性漫画編集者とイスラム教徒の米漫画作家がタッグを組み、自分たちの女子高生時代を濃厚に反映した漫画好きの“おたく女子”にアピールする物語に仕上げる。白人男性が定番だったヒーロー漫画に初登場するイスラム系女性の主人公とあって、米社会の変化を感じさせる作品となりそうだ。
「われわれとイスラム系米国人が住むこの世界は日々、刻々と変わっている。そして、こうした状況を反映する物語を描くことが非常に重要だと思う」
この作品の担当編集者で「スパイダーマン」や「X-メン」のコミックを手掛けた経験もあるマーベル社のサナ・アマナットさんは、新連載の意図を米メディアにこう説明した。
米紙ニューヨーク・タイムズや米CNNテレビ(いずれも電子版)、ロイター通信などによると、主人公の少女の名はカマラ・カーンで、ニューヨーク市近郊ニュージャージー州で、保守的なパキスタン移民の両親と兄の4人で暮らしている。
おしゃれなオタク風のめがねとハンチング帽がトレードマークの彼女は漫画が大好きなどこにでもいる普通の少女だが、ある日、自分の手足や体を自由自在に大きくしたり小さくしたりできる特殊能力を発見。悩みながらもヒロインとして自分の力を信じるようになる。
作品は些細(ささい)なきっかけで生まれた。アマナットさんが副編集者のスティーブ・ワッカーさんと雑談中、イスラム系米国人として自身のアイデンティティーに悩み抜いた過去をそれとなく語ったのだ。
すると「彼(ワッカーさん)は私が直面したジレンマに興味を示し、『君みたいな青春時代を送った女の子たちのヒーローがいたらすごいと思わないか? 君たちが過ごした日々から着想を得たヒーローを作ろう』と言い出した」という。
漫画家には、大学時代にイスラム教に改宗した米国人の女性漫画作家兼小説家、G・ウィロー・ウィルソンさん(31)を選んだ。
ウィルソンさんは作品について「主人公はパキスタンのイスラム教徒の保守的な生活習慣と、(奔放(ほんぽう)な)米国のティーンエージャーである自分の生きざまとのはざまで格闘することになる」と説明。「記憶の中に鮮明に残る自分の高校時代を反映した作品にしたい。物語の中心は(漫画好きな)すべてのオタク系女子が求める、大人になり切れないティーンの女の子による友情物語になる」と明かした。
米国のヒーロー漫画の主人公といえば、かつては白人男性が定番だったが、最近は人種の多様化を受け、2011年には新しい「スパイダーマン」に黒人とヒスパニックのハーフが登場するなど、非白人のキャラクターが増えている。
とはいえ、イスラム系米国人で女性という少数派の典型のようなヒーローは初めてだ。アマナットさんは「反イスラム派だけでなく、イスラム教徒からも否定的意見が出てくることになりそうだ」と指摘し、米社会で一定の摩擦が起きる可能性を示唆。
ウィルソンさんは「イスラム教を伝道しようという意図はない。私にとっては主人公が信仰との間で抱える葛藤を描くことが大切」と話す。
米社会ではイスラム系の若い世代が着実に増えている。その心情を映したヒーロー漫画は、必然的に米社会の「いま」を映す鏡にもなるはずだ。(SANKEI EXPRESS)