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英王室 ジョージ王子の洗礼式 思い出と歴史に見守られて

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英王室 ジョージ王子の洗礼式 思い出と歴史に見守られて

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 英王室のウィリアム王子(31)とキャサリン妃(31)の第1子として今年7月に誕生したジョージ王子の洗礼式が10月23日、ロンドンのセントジェームズ宮殿の礼拝堂で行われた。ウィリアム王子夫妻の意向で一般には非公開、近親者をはじめ夫妻の友人ら数十名が参加する小規模なものだったようだ。そこで、イギリス政治外交史が専門で、英王室の歴史に詳しい関東学院大文学部の君塚直隆教授(46)にこの洗礼式について聞いた。

 洗礼式をバッキンガム宮殿で行わなかったことや、洗礼式の立会人にウィリアム王子夫妻の学生時代の友人が多数加わったことなどから、夫妻が伝統にとらわれず英王室に新風を吹き込んだかのようにとらえる傾向があるが、このこと自体は「異例ではない」と君塚教授はいう。

 そもそも洗礼式を行う場所はその季節に応じて選ばれることが多い。今回は夏休みが終わった秋口で、エリザベス女王が避暑から戻りロンドンにいたため、セントジェームズ宮殿が選ばれた。ちなみにウィリアム王子自身は、生後6週間で曽祖母であるクイーンマザーの82歳の誕生日に当たる1982年8月4日にバッキンガム宮殿で、弟のハリー王子は12月初旬だったことから王室一家が週末を過ごすウィンザー城で、それぞれ洗礼式が行われたという。

 セントジェームズ宮殿の礼拝堂は、97年に36歳の若さで交通事故死したウィリアム王子の母、ダイアナ元妃の遺体が葬儀の前まで安置されていた場所。さらに、王子が2010年11月、鮮やかなブルーのドレス姿のキャサリン妃(当時はケイト・ミドルトンさん)を伴って結婚発表会見に臨んだのもここセントジェームズ宮殿だった。ウィリアム王子にとっては大切な思い出の詰まった場所なのだろう。

 また、セントジェームズ宮殿の礼拝堂は、プライベートな慶事を執り行う重要な施設で、ビクトリア女王やジョージ5世の結婚式も行われた由緒ある場所という。

 さらに、カナダ訪問中のアン王女と公務に赴いたアンドリュー王子が欠席したことが取り沙汰されたようだが、君塚教授は「おいの洗礼式よりも公務を優先させるのは当然」と話す。洗礼式が成立する条件として「エリザベス女王の意向が第一で、夫のフィリップ殿下、それにチャールズ皇太子夫妻、キャサリン妃の両親ミドルトン夫妻の計6人さえ出席すれば問題ない」。洗礼式はあくまでウィリアム王子一家の内々の問題ととらえる。

 ≪2人で子育て 伝統に新たな風≫

 そんな中、確実に伝統を踏襲したことが2点あると指摘。一つは洗礼服、もう一つは聖水に使われたヨルダン川の水だ。

 穏やかな表情でウィリアム王子に抱かれている姿が印象的だったジョージ王子だが、身に着けていたのはフリルのついた可愛らしいデザインの洗礼服。一瞬女の子かと思ったくらいだ。それもそのはずで、1840年にビクトリア女王が長女、ビッキー王女のために作ったサテン(ホニトン織)のガウンと同じデザインのものという。ビッキー王女が着用したものは167年もの間王室内で使い続けられたためボロボロになり、エリザベス女王の指示で博物館入りした。

 今回の洗礼服は女王が自身のデザイナーのアンジェラ・ケリー氏に全く同じものを発注。2008年のジェームズ王子(女王の三男、エセックス伯の長男)に引き続き、ジョージ王子が2回目の着用となった。

 また洗礼式で聖水に使用されたのは、イエス・キリストが洗礼を受けたといわれるヨルダン川の水。中東情勢の悪化でヨルダンからの運搬を一時中断し、ストックした水を使っていたが、情勢安定に応じて取り寄せたのだろうという。

 ウィリアム王子夫妻の友人数名が「名親(名付け親)」であるゴッドマザーやゴッドファーザーとして洗礼式に参列したこと自体も異例なことではないという。

 そんな中、君塚教授が注目するのは夫妻の子育てだ。夫妻はなるべく乳母(ナニー)を付けないで2人で子育てをする方針を打ち出している。これまで王室では、基本的には乳母に任せ、時間が許すときに子育てを担うケースが一般的だった。今回、ウィリアム王子の乳母も務めた71歳のベテランのナニー、ジェシー・ウェッブさんがジョージ王子も担当することになった。今後夫妻の公務が増した場合どう対処するのか。君塚教授は「どれだけ続けられるか分かりません」と話し、2人の子育てに注目する。(EX編集部/撮影:AP/SANKEI EXPRESS

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