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北朝鮮の挑発を懸念するロシア
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ロシアが北朝鮮の挑発を懸念している。7月27日に北朝鮮が行った「朝鮮戦争勝利60周年」式典について、露国営ラジオ「ロシアの声」が厳しい論評を伝えた。「ロシアの声」は、国営放送なので、ロシア政府の立場に反する論評は行わない。
「ロシアの声」が8月1日に伝えたのは、アンドレイ・ラニコフ氏の署名記事「北朝鮮、朝鮮戦争勝利式典はプラグマティズムと反米主義の混合」(http://japanese.ruvr.ru/2013_08_01/118944004/)と題する論評だ。
<朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)では朝鮮戦争終結60周年を祝う行事が盛大に行われた。北朝鮮は公式的にはこの戦争は北の勝利に終わったと捉えている。韓国はこれに対し真っ向から反対の意見を表しており、勝利したのは韓国だと主張している。この論争に首を突っ込むことは意味がない。それよりも北朝鮮の祝賀行事にどんな外国からの賓客が出席していたかに注目してみたい>
具体的にどの国が、どのレベルの代表団を派遣したのだろうか。
<中国はこの式典には高いレベルの代表団を送っていた。李源潮国家副主席が出席していたのだ。これは中国と北朝鮮の関係がある程度複雑化しているとはいえ、中国は以前と変らず北朝鮮を戦略的連合国とみなしており、少なくとも戦略的に重要な緩衝国ではあることの紛れもない証拠となっている。ロシアは朝鮮戦争に従軍したロシア人功労軍人による代表団を送った。
シリアの代表団の団長はアラブ社会主義党(バアス党)のアブドゥラ・アリ・アフマル副総書記が務めていた。シリアは昔から北朝鮮と近しい関係を維持している。現在、シリアは内戦状態にあり、政府は外国からの支援を、たとえそれが象徴的なものであっても、非常に必要としている。
かなり高いレベルの代表団を送ったのはイランだ。イランのイスラム民主主義と北朝鮮の独裁体制的なチュチェ思想(主体思想)の間には共通するものが多くあるとはいえないが、それでも両国は長年にわたる緊密な軍事技術協力関係を結んでいる。イランと北朝鮮のエンジニアが核プログラムに、長距離ミサイルの開発にともに携わるようになってすでに久しい。両国とも核ミサイルの盾は米国の攻撃から身を守るため、自分たちに必要なものだととらえている。これに関してはイランも北朝鮮もおそらく正しいだろう>
イランのロウハニ新政権も北朝鮮と従来の協力体制を維持することを、ロシアは示唆している。
<キューバは北朝鮮のイデオロギー上の連合国といえるが、そのキューバを代表して式典に出席したのはホセ・ラモン・バラゲル・カブレラ氏一人だった。カブレラ氏は有名な政治家で、現在キューバ共産党国際部の副部長を務めている。だがこのケースでも相互の親近感は多くは軍事技術協力に強調されていた>
さらにアフリカからウガンダとザンビアが代表団派遣した。「ロシアの声」は、<ピョンヤンに公式代表団を送り込んだこれらの国々が、ザンビアを除いては米国およびその同盟国とは容易ではない関係を結んでいる。このため、こうした国々の代表団が北朝鮮の公式行事に列席していたということは、プラグマティズム的な外交だけでなく、「反帝国主義的連帯」の表れだとみなしてもいいのではないだろうか>と指摘する。
ロシアは、この式典に政府代表団を派遣せず、朝鮮戦争従軍経験者(ソ連兵が義勇兵として参加した)の出席のみにとどめた。北朝鮮の金正恩第一書記が進める「反アメリカ帝国主義国際連帯」をロシアは危険視しており、そのような冒険政策から距離を置く姿勢を鮮明にしている。(作家、元外務省主任分析官 佐藤優/SANKEI EXPRESS)