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【取材最前線】「W杯おあずけ」予知? 内田の視野

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【取材最前線】「W杯おあずけ」予知? 内田の視野

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ヨルダン・首都アンマン  よもやの黒星だったというほかない。勝つか引き分けで5大会連続5度目のサッカーワールドカップ(W杯)出場が決まった3月のW杯アジア最終予選・ヨルダン戦。敵地に乗り込んだ日本代表はホームで6-0と圧勝した相手に1-2で屈し、W杯切符獲得は6月の残り2試合に持ち越された。本田圭佑(CSKAモスクワ)、長友佑都(インテル・ミラノ)の主力2人を故障で欠いていたとはいえ、準備期間も十分に確保され、勝利が期待された一戦。メディアの側にも楽観論が充満していたが、振り返れば、それに一人異を唱えていたのが内田篤人(シャルケ)だった。

 ドーハでの事前合宿初日。彼の口から発せられたのは威勢のいい言葉ではなく、「そんな簡単に(W杯に)行けるとは思っていない。最終予選のアウェー戦が難しいのは、行ってきたし、見てきたし(知っている)」という慎重な言い回し。さらには結果を予知していたかのように「最後の1試合ならともかく、次もあるし、決められなくても落ち込むことはない」とも口にした。他の選手たちが口々に「勝ってW杯行きを決めたい」と話していたのとは対照的だったため、強く印象に残った。ヨルダン戦後、改めて真意を尋ねた際にはかわされたが、前のめりになっていたチームの雰囲気にある種の危惧を感じていたのかもしれない。

 ただ試合中も、この一歩引いた位置取りで悠然と構えていられるのが内田の魅力。スピードや運動量もさることながら、ピッチを俯瞰(ふかん)する能力にたけており、「え、いつの間にその位置に!!」と驚かされた経験も一度や二度ではない。今季のドイツ1部リーグ公式サイト英語版のユーザー投票では、優勝したバイエルン・ミュンヘンのラーム主将を抑え、右サイドバックのベストイレブンに選出された。甘いマスクで女性人気が高く、日本からの“組織票”が支えた影響は否定できないが、強豪クラブで定位置を譲らず、高い評価を受け続ける理由も、その広く深い視野にあるのではないかと感じる。

 前回のW杯は本大会直前に定位置を明け渡し、出場機会がなかった。「W杯に行けても出られないと意味がない」と腕をぶすブラジル大会での雪辱に向け、まずは残る最終予選での奮闘を期待したい。

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