コロナ医療体制、縮小か維持か 自治体で割れる判断
新型コロナウイルスの感染状況が低水準となる中、医療提供体制をめぐる自治体の判断が割れている。北海道や東京など21都道府県が新型コロナ病床を確保計画の最低レベルまで緩和する一方で、9府県はリバウンドなどを警戒し、最大規模の体制を維持。ワクチン接種が進み、飲み薬の実用化も見込まれており、自治体は今後、通常医療と新型コロナ医療の両立に向け、適正な病床数の設定などの検討を迫られそうだ。
「医療資源が乏しく、予期せぬ事態があるかもしれない。最悪を想定して準備する必要がある」
宮崎県内では10月20日以降、新規感染者が確認されておらず、入院中の新型コロナ患者もいないが、担当者の警戒感は強い。県は病床確保計画で定めた3段階で最も高い「フェーズ3」を維持し、新型コロナ患者をすぐに受け入れられる「即応病床」を332床確保している。
担当者には夏の第5波の記憶が鮮明に残っている。「波は高く、通常医療を制限する一歩手前だった。再び厳しい状況にならないようにしておきたい。年末年始に第6波が生じるリスクはあり、病床数を減らすという段階には至っていない」と強調した。
47都道府県は感染や療養の状況に応じて段階的に即応病床数を引き上げる「病床確保計画」をそれぞれ策定している。厚生労働省の公表資料によると、10日時点で即応病床を最大限確保する「最終フェーズ」としているのは宮城、福島、愛知、三重、滋賀、京都、和歌山、鳥取、宮崎の9府県。このうち宮城、鳥取、宮崎の入院者はゼロ。入院者と病床が最多の愛知はそれぞれ35人、1605人となっている。
過去最多の感染者が確認された第5波では9月上旬に新潟、富山、徳島、佐賀、大分以外の42都道府県が最終フェーズに引き上げていた。感染状況の改善に伴い、これまでに東京や神奈川、大阪など21都道府県が「フェーズ1」まで医療体制を緩和している。
東京都は10月初め、過去の感染拡大の波を教訓に、専門家の意見を参考にして計画を見直し、フェーズ1での即応病床数を「1千床未満」から「4千床」まで大幅に引き上げた。病院ではエリアを分けてゾーニングする必要性などがあるため、現状は約4800床だが、順次4千床に近づけていく方向だ。
都内の入院者は17日時点で102人だが、感染状況によってはフェーズ3で6651床まで引き上げる計画で、「病院側には要請から2週間でコロナ病床に転換してもらうようお願いしている」と担当者。「通常医療との両立が求められる段階だ」とするが、「第5波では感染の立ち上がりが早かった。今後、刻んで減らしていくべきなのか難しいところだ」とジレンマを抱えている。
埼玉県は10月下旬、昨年11月末以来約11カ月ぶりにフェーズを4から3に引き下げた。県が病院側に病床の確保状況について意向を確認したところ「もう少し様子を見たい」などリバウンドを警戒する声が多かったという。
第5波の感染収束の理由が明確にならないことも不安要素で、担当者は「昨年は11月半ばに感染拡大が鮮明になった。現場の状況をみながらバランスよく進めるしかない」と話した。