■給付金に有効期限を設ける
給付金を課税対象にしても一定の割合で貯蓄に回るでしょう。それは仕方ないと諦めるしか有りません。しかし、原資は税金ですから国民に渡し切りでは困ります。そこで有効な手法は有効期限を設けることです。
消費税が10%になるタイミングでプレミアム付き商品券事業が実施されたのでを購入した人もいるのではないでしょうか。家計の負担緩和や地域での消費下支えを目的とした事業です。その際は、1197万人が2209億円購入し、2200億円利用されました。99%の利用率です。国の事業費は1026億円となっています。
同じ様に、給付金を商品券として支給すればいいのです。もしくは、有効期限付きのマイナポイントとしてもいいでしょう。10万円分の商品券か13万円分のマイナポイントの二者択一にすればマイナカードの普及にも一役買うでしょう。
有効期限を設けることで、何かしらの消費に回ることは確実です。注意すべきは、お釣りを出さないようにすることでしょうか。500円の商品券を使って10円のお菓子を買って、お釣りを貯蓄に回す裏技が考えられます。細かいことですが、お釣りは発生させないようにすべきでしょう。
10万円が全額消費に回れば、そのうち約1割は消費税として国庫に戻ります。9割は事業者の売上に寄与するわけですから、誰かの給料になるなり、法人税として回収することもできるでしょう。貯蓄に回ってしまい一種の信用創造効果を発生させないことが最も愚かな方法と言えます。(※1)
課税対象にして、かつ有効期限を設ければ、所得税、住民税、消費税、法人税などへの波及効果が期待できます。賢い高所得者は受け取らないという選択をすればいいだけです。受け取って全額消費すると税額分のマイナスになるのですが、一般の人はそこまで気が付かないでしょうから、かなりの効果が見込めそうです。
■本人利用に限定する
最後に、規制するのが難しいのですが、本人利用に限定する必要があります。酒、タバコ、ギャンブルなど家族のお金が特定の人の嗜好品として消費されることは制度上望ましくありません。商品券であれば記名制にして、本人しか使えないようにしたいところです。小学生になれば名前を書くことができますから、未就学児のお金を親に吸い取られないようにする方法を考える必要があります。利用時にマイナンバーカードなどで本人確認を徹底するくらいしか方策はないかもしれません。
いかがでしょうか、定額給付金もいくつかの条件を設ければ生活を支え、消費を喚起し、経済を回す効果が期待できます。何も条件を設けずに支給すればいいという考えは、バラマキ以外の何者でも有りません。政府関係者が一人でも本記事を見てくれればいいのですが。
※1 10万円の商品券が配られた場合、それは全額消費されるものの、普段の消費を8、9万円減らすということが起きる、という地域振興券についての研究もあります。「Did Japan's shopping coupon program increase spending?」
【お金で損する人・得する人】は、FPなどお金のプロたちが、将来後悔しないため、制度に“搾取”されないため知っておきたいお金に関わるノウハウをわかりやすく解説する連載コラムです。アーカイブはこちら