優秀でない社員であれば、自分にとって不利益なことは明らかです。生産性が低いということは、再雇用の可能性が低く、もし再雇用されたとしても低賃金に甘んじることになります。家族を養っている場合には、容認できない制度変更と言えるでしょう。
普通の社員はどうなるでしょう。一部は優秀であることを目指し学び、成長を志す人が出てくるでしょう。社員の成長は会社にとってもプラスとなり、本人には給与上昇などの還元があります。
もう一方の普通の社員は45歳定年制をマイナスに捉え、戦々恐々とし続けることになるでしょう。働くモチベーションは下がると考えられます。
45歳という年齢は、30歳で初婚、31歳で第1子誕生とした場合、子どもが中学生のタイミングです。高校、大学への進学を考えた場合に中学時代の塾代など毎月数万円の支出は家計にとって大きな負担になります。
これからお金が必要になるタイミングで雇用の安定感がなくり、賃金が下落するようでは安定した家庭が運営できません。事前に45歳定年とわかっていれば恐ろしくて結婚できないでしょう。子どもを育てようと思わないでしょう。住宅ローンを組むことも控えるでしょう。
何ら対策せずに45歳定年制を導入することはないでしょうけれど、実際には大いなるマイナスのインパクトが生じる可能性が大きいのではないでしょうか。
もし、企業側が45歳定年制を導入するのであれば、
(1)事前に給与制度を変更し若手の生産性を搾取しない賃金を確保する
(2)45歳で定年を迎えても仕事に困らないような人材育成に努める
(3)出戻り制度など転職した社員であっても一定の条件を満たせば復職できるような人事制度を構築する
などの対策が必要でしょう。
また、そもそも国の方針が生涯現役、高齢者の雇用確保にあります。国の方向性を長期雇用前提でないように方向修正しなければ、掛け声倒れに終わるでしょう。
なお、筆者は一人のフリーランスという立場から、5年、あるいは10年くらいで雇用契約を打ち切っていくような制度のほうが、働く側の学ぶインセンティブが高まり実力が向上するのではないかと考えます。ある意味では、政治家と同じです。4年か6年ごとに選挙を行い、仕事を継続するか失職するか、判断してもらうのです。
この議題が炎上するほど、働き手にとっては危機感があるのだろうということは、裏を返せば的を射た提言と言えるのかも知れません。
【お金で損する人・得する人】は、FPなどお金のプロたちが、将来後悔しないため、制度に“搾取”されないため知っておきたいお金に関わるノウハウをわかりやすく解説する連載コラムです。アーカイブはこちら