クルマ三昧

GT-Rの開発ドライバーを起用 「ノートオーラNISMO」にかける日産の志

木下隆之
木下隆之

 日産ノートオーラに追加された「NISMO(ニスモ)仕様」については、もう一つの連載「試乗スケッチ」ですでに紹介している。e-POWERの加速特性を鋭くし、ボディの強化やサスペンション剛性を引き上げる等、徹底的に走りをスポーティーに仕上げたモデルである。実はその開発には、「匠」と呼ばれるテストドライバーが参画していたことを知って驚いた。日産のテストドライバーランキングの最上位、「AS」の資格を持つ神山幸雄氏がステアリングを握り、マシンの開発に直接携わっていたのである。

  日産の頂点に立つドライバー

 実は僕は古くから神山氏と親交がある。記憶に新しいところでは、現行のR35型GT-Rの開発を主導したのが神山氏であり、開発の舞台は難攻不落なコースとして世界中から恐れられているドイツのニュルブルクリンク。僕はゲストとして何度か共にステアリングを握っているのだ。

 車両の開発には必ずテストドライバーが参画している。料理でいえば味付けを担当。塩胡椒は足りていないのか、出汁は効いているのか否か。つまり、サスペンションのバネレートやエンジン特性など、自ら感じたことを指摘し改善する。テストドライバーがいることには不思議はないが、あえていうならば経済車であるノートオーラの中の、わずか1割にも満たない販売台数のニスモ仕様車のために世界最速記録を樹立したR35GT-Rの開発ドライバーを起用した日産の志に驚いたのである。

 実はもっと深く、神山氏とは親交がある。というのも、かつて僕が日産契約ドライバーだった時期に、日産テストドライバー認証制度設立に参画しているのだ。

 当時日産はドライバーの社内グレードを、一般的なドライブ能力が認められたに過ぎない「C3」から、高性能モデルの開発が許される「A1」までの9段階に分けていた。だが、いつしか特殊技能認定者であるはずのA1が100人を超えており、しかも時代はさらにハイパワー高性能モデルを必要としていた。同時に日産は世界基準のGT-Rの開発を模索していた。A1を超える最上級グレードの設立が急がれたのだ。それが「AS」だ。

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