宇宙開発のボラティリティ

中国に続きロシアも宇宙ステーションの独自建設を発表 鮮明化する欧米排除

鈴木喜生
鈴木喜生

 ロシアが独自の宇宙ステーション「ROSS」を打ち上げることを、ロシアの宇宙機関ロスコスモスが発表した。8月26日(世界協定時)、その概要がロスコスモスのウェブサイトにアップされた。

 ロシアはすでにISS(国際宇宙ステーション)から2025年以降に撤退することを決定している。また、NASAが主導するアルテミス計画における月軌道周回ステーション「ゲートウェイ」の建設にも参加しないことを宣言。今年3月には、月面基地の建設において中国と協力する覚書に調印もしている。

 ロシアは1990年代から続いてきた米国との協調路線に終止符を打ち、独自路線に舵を切るだけでなく、中国との連携を強化しようとしているのだ。

 ロシアは何を目指しているのか? 今回は、このロシアの新型宇宙ステーションROSSと、昨今におけるロシアの宇宙開発事情をご紹介したい。

ロシア独自の宇宙ステーション「ROSS」とは?

 今回ロスコスモスが公表したリリースと映像を見ると、ロシアの新型宇宙ステーション「ROSS」(Russian Orbital Service Station)は、中央の結合部から四方と上下に計6基のモジュールが接続する形態をしている。クルーは常駐せず、基本的には無人で運用されるが、有人宇宙船によって定期的にクルーが訪れるシフトが組まれる予定だ。

 また、ROSSからは他の小型の無人自律モジュールがリリースされ、それはROSSと同軌道を航行する。その探査目的は不明だが、小型自律モジュールは定期的にステーションに接近し、メンテナンスを受けるという運用法が採られるという。

 ROSSは地球の低軌道を周回する宇宙ステーションであり、その軌道傾斜角は97度から98度が予定されている。軌道傾斜角とは、宇宙機が航行する軌道が赤道(または横道面)に対して何度傾いているかを示すもので、赤道上空を航行する場合はゼロ度。つまりROSSの場合、赤道に対して直角以上の角度を持つ「極軌道」に投入される。

 地球の北極や南極の上空周辺を飛ぶこの軌道に配置することでROSSは、緯度が高い位置にあるロシアの上空全域をカバーしつつ航行することになる。これはソビエト連邦崩壊による財政難で実現しなかった「ミール2」計画でも予定されていた軌道だ。

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