中国の宇宙ステーション「天宮」の建設が、ついに開始されました。
3つのモジュールからなるこの大型宇宙ステーションは4月29日、最初のコアモジュール「天和」の打ち上げに成功し、地球を周回する低軌道へ投入。早くも来年2022年に完成する予定です。
今回は宇宙ステーション「天宮」のアウトラインを解説し、驚異的なスピードで進行する中国の宇宙開発を検証します。
中国の宇宙ステーションは軍用? 平和利用?
中国の最新型ロケット「長征5号B」によって、文昌衛星発射センター(中国最南端の島にある宇宙基地)から打ち上げられたコアモジュール「天和」は、クルー3名が長期滞在できる基礎居住区であり、全長は16.6m、最大直径4.2m、質量22.5トン。ここにふたつの実験モジュール「問天」と「夢天」が接続されれば、中国の宇宙ステーションとしては過去最大のものとなります。
上イラストにおいて、中国国旗が掲げられているのが今回打ち上げられた「天和」、そこから左右に接続しているのが実験モジュール「問天」と「夢天」です。さらにこのイラストには、「天和」の先端(イラスト右)に無人補給機と、ステーション下部と後方には有人宇宙船2機がドッキングする様子が描かれています。
かつて旧ソ連が1970年代に打ち上げた軍事用宇宙ステーション「アルマース」には機関砲が搭載されていましたが、この「天宮」はISS(国際宇宙ステーション)と同様、研究を主目的とした平和利用のためのステーションで、その運営には国連宇宙局も協力体制をとっています。実験モジュールは国連加盟国にも開放される予定で、2019年6月には実験に参加する研究機関が選定され、そこには東京大学も名を連ねています。
ISS退役で、低軌道上にある唯一の宇宙ステーションに?
中国が宇宙ステーション「天宮」を打ち上げるのは、これで3機目です。
最初に打ち上げたのは「天宮1号」(2011年)で、有人宇宙船「神舟9号」、「10号」とのドッキングにも成功しています。しかし、2016年3月に制御不能な状態に陥り、落下地点が予想できない状態のまま南太平洋に墜落。世界を恐怖に陥れたこの事件は大きく報道されました。
2016年9月には、1号と同型の「天宮2号」が打ち上げられ、そこに有人宇宙船「神舟11号」がドッキングし、クルー2名が33日間に渡って滞在しました。
これらの2機は、1971年に旧ソ連による世界初の宇宙ステーション「サリュート」や、1973年に米国が打ち上げた「スカイラブ」と同様に、大型ロケットの第三段をそのまま軌道上に乗せる単体モジュール型のステーションでした。しかし、複数のモジュールを軌道上で結合していく今回の「天宮」は、与圧区画が広く、研究設備が豊富に搭載でき、クルー滞在期間も長く、その有用性は格段に向上しています。
ISSは2024年に民営化され、その数年後に運用停止・制御落下されますが、その後、地球周回軌道上にある宇宙ステーションはこの「天宮」だけとなる可能性もあります(※)。
※米国の民間企業であるアクシオム・スペース社が、ISSへの追加モジュールを2024年に打ち上げ予定。ISS退役後、そのモジュールが単独で宇宙ステーションとして運用される計画も進められています。