鉄道業界インサイド

「ロマンスカーミュージアム」にかける小田急の想い

枝久保達也
枝久保達也

 新幹線計画の基礎となった「SE」

 新宿と箱根、江の島を結ぶ小田急電鉄は4月19日、小田原線海老名駅の隣接地に鉄道博物館「ロマンスカーミュージアム」をオープンした。ロマンスカーミュージアムは「子どもも大人も楽しめる鉄道ミュージアム」をコンセプトに、小田急線開業当時の車両「モハ1」や、1957年にデビューした「初代ロマンスカー」こと「SE(Super Express)」を始めとする歴代5車種のロマンスカーを展示している。

 その他、小田急線沿線を再現したジオラマパークや、ペーパークラフト体験が楽しめるキッズロマンスカーパーク、本物の運転台を流用したロマンスカー運転シミュレーター、プレミアムなホットドックやクラフトビールなど沿線食材を取り入れたメニューを提供するロマンスカーミュージアムクラブハウスなど、多様なコンテンツを取りそろえた施設だ。

 営業時間は午前10時から午後6時まで(第2、第4火曜日は休館日)で、入場料は大人(中学生以上)900円、子供(小学生)400円、幼児(3歳以上)100円だ。ただ、新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、当面の間、入館は事前予約制となる。

 大手私鉄では1982年に東急電鉄が創立60周年を記念して開設した「電車とバスの博物館」、1986年に営団地下鉄(現東京メトロ)地下鉄60周年を記念して開設した「地下鉄博物館」、1989年に東武鉄道が開業90周年を記念して開設した「東武博物館」、2013年に京王電鉄が開業100周年を記念して開設した「京王れーるランド」、2020年に京急電鉄が創立120周年を記念して開設した「京急ミュージアム」に続く鉄道博物館となった。

 ただ、これらの施設の多くが自社名を冠した施設にしているのに対し、「小田急博物館」や「小田急ミュージアム」とはせず、「ロマンスカーミュージアム」と銘打ったところに、小田急のロマンスカーにかける想いが現れていると言えよう。

 見どころは何と言っても歴代のロマンスカーである。展示されているロマンスカーは「SE(3000形)」の両先頭車と中間車の計3両、「NSE(3100形)」の両先頭車と中間車の計3両、「7000形(LSE)」の先頭車1両、「HiSE(10000形)」の先頭車1両、「RSE(20000形)」の先頭車と中間車の計2両、合計10両だ。

 中でも1957年にデビューした「SE」は、新宿~小田原間を60分で結ぶことを目標に、徹底的な軽量化と低重心化を図り、日本ではほとんど先例のなかった車両と車両の間に台車を設置する連接台車構造が採用された。

 開発は国鉄の鉄道技術研究所の協力のもと進められ、国鉄と小田急が合同で行った高速走行試験では、当時の狭軌(在来線の線路規格)の最高速度記録である145km/hを達成。この試験で得られたデータは国鉄が検討を進めていた新幹線計画の基礎となった。

 「SE」は1968年から編成を短縮の上、国鉄御殿場線直通列車「あさぎり」に投入され、「SSE(Short Super Express)」と呼ばれるようになった。今回、展示される保存車は、片方が「SE」時代、片方が「SSE」時代の外観をしていることにも注目だ。

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