背景に鉄道事業の“働き手”不足
常磐線(各駅停車)のATO化が見据えるのはワンマン運転だけではない。JR東日本はグループ経営ビジョン「変革2027」の中で、運行やサービスなどの様々な側面から鉄道を質的に変革し、「スマートトレイン」を実現するとしており、運行面ではドライバレス運転の実現を掲げている。今回の常磐線(各駅停車)へのATO導入は「将来のドライバレス運転を目指したATOの開発を進める」布石との位置付けだ。
ここでいうドライバレス運転とは電車の運転免許である動力車操縦者運転免許を保有する運転士が乗務しない運行形態を指し、無人運転を意味するものではない。運転は全てATOが担うが、緊急時に非常停止ボタンを操作する保安要員の添乗を想定している。
労働人口の減少に伴い、鉄道事業者も働き手不足に直面しつつあり、持続的な鉄道運行のためには省力化は欠かせない。またコロナ禍を受けた収益性の低下に対応するためにも経営の効率化は不可欠だ。
国家資格である運転士の養成には多額の費用と長期の時間が必要であり、運転士が必要なくなれば様々なメリットが生じる。こうした動きを総合すると、車掌ひとりのワンマン運転が当面の到達点になると考えられる。
いずれにしてもカギを握るのは運転操作を担うATOの進化だ。自動車では自動運転実現に向けた研究開発が進んでいるが、50年以上の歴史がある鉄道のATO開発もこれからますます加速していきそうだ。
【鉄道業界インサイド】は鉄道ライターの枝久保達也さんが鉄道業界の歩みや最新ニュース、問題点や将来の展望をビジネス視点から解説するコラムです。更新は原則第4木曜日。アーカイブはこちら