(197)コレステロールの薬は恐れず服用を
人が寿命を全うする上で妨げになるような主な病気として、感染症、がん、動脈硬化が挙げられますが、そうした病気やワクチン、薬について、正しい情報だけが広まるわけではありません。
60代前半の男性が久しぶりに受診しました。2年前に悪玉(LDL)コレステロールは非常に高かったため、コレステロールを下げるスタチンという種類の薬を始めたのですが、服用をやめたそうです。理由を尋ねると、週刊誌に副作用などが書いてあり、気になったそうです。
スタチンという種類の薬は、悪玉コレステロールを下げることなどから動脈硬化を抑制する作用を持ちます。まれに筋肉を壊してしまう副作用が出ることが知られていますが、通常は安全に使用することができます。実際のところスタチンの服用で体の不調が増えるかどうかを確かめた研究結果が報告されています。これは以前にスタチンの服用で、筋肉が壊れるような副作用は確認されなかったものの、体の不調を自覚し服薬を中止した英国人200人を対象に行った研究です。被検者はスタチンもしくは偽薬をそれぞれ2カ月ずつ、どちらを飲んでいるかわからないようにしながら服用を続け、その間の筋肉痛などの症状や生活の質について自ら評価したものです。結果はスタチンと偽薬とで、筋肉に関連する症状の出現に差は見られませんでした。生活の質に関しても差は出ず、結果を知らされた被検者の大半は、スタチンを再開することに賛同しています。
多くの人が服用して問題なければ、通常その人たちはわざわざ副作用がないことを披露はしませんが、副作用が出た人や副作用だと思い込んだ一部の人はそのことをいろいろなところで口にする可能性があります。そういった情報は伝わりやすく、週刊誌やインターネットなどで記事になりやすいものなのでしょう。スタチンは安全で効果的であることは研究で示されていますし、筋肉が壊れるという副作用は血液検査でわかるもので、医師が見落とすことはそうはありません。その男性にはこういったことをお話しし、もう一度よく考えてもらうようにしました。
(しもじま内科クリニック院長 下島和弥)