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ピース又吉さんが東大副学長とオンライン講義 安田講堂から「言葉の力」発信

SankeiBiz編集部
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 吉本興業の「エンターテインメント」と東京大学の「知」を掛け合わせた「笑う東大、学ぶ吉本プロジェクト」が発足し、お笑いコンビ「ピース」の又吉直樹さんが7日、東大安田講堂でオンライン特別講義に臨んだ。芥川賞作家の芸人と学問の最高峰がタッグを組み「言葉力」をテーマに議論。東大副学長を務める東大大学院人文社会系研究科の佐藤健二教授とともに、「白熱教室」さながらの熱のこもった講義が展開された。

 「放屁」という言葉で「現実」を伝えた

 緊張の面持ちで安田講堂に現れた又吉さん。「東大と吉本で何かやるって、ここは(桂)文枝師匠じゃないとダメですね」と笑いを誘うと、「芸人は面白いと思ったことを(話芸で)再現できないといけない。その場で感じた『これが面白い』という感動を伝えるのが重要。言葉は単に伝達手段ではなく、語ること自体、その物語を作るという意味があるのではないか」と芸人論に言及。

 太宰治の短編『富嶽(ふがく)百景』で井伏鱒二が「放屁(ほうひ)した」と書かれている場面を引き合いに出し、「井伏が岩の上で退屈そうにしていた。それを読者にどう伝えるか。太宰は『放屁』という言葉を使い、現実と同じような状況を伝えたのだと思う。そういうものが僕の考える表現だ」と指摘した。

 佐藤教授は「難解なものを難解なまま伝えられる言葉の力が必要」と応じ、「言葉はバーチャルリアリティである」と形容。新型コロナウイルス感染拡大の影響でオンラインでの会議や講義が増えているが、一方で「(オンラインツールでは)どこか伝わっていないというか、空気が共有されていない、何かが足りないという感じもある。現代は情報を伝えるということがクローズアップされ、いつでも、どこでも『つながる』ということばかりが強調されている」と疑問を呈した。

 学生時代、級友と会話しないで済むように休み時間に本を読んでいたと回想した又吉さんは「つながることが主目的になりすぎると危険というのはよく分かる。SNSで気軽に発言できると、自分の言葉について考える機会がなくなる。一人で考える時間も必要だ」と語った。

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