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エスカレーターの慣習 “関東左・関西右”は対抗意識から? 駅のPOPが話題に

SankeiBiz編集部
SankeiBiz編集部

 「ねぇ、お母さん! どうして少し前までエスカレーターは『関東は左側』なのに、『関西は右側』に立ってたの?」。神戸市のターミナル駅に設置されたアイキャッチPOP(ポップ)に描かれた母娘のやりとりが面白すぎるとSNSで話題になっている。関東では長らくエスカレーターでは左側に立ち、急いでいる人が追い越せるように右側を空けておくという“慣習”が根付いていたが、関西では左右が入れ替わる。POPで“お母さん”は「関東に対抗意識があったんじゃない!」と答えるが、本来は安全面から歩行を想定していないエスカレーター。そもそもなぜ、片側を空けて歩けるようにする“文化”が広まってしまったのだろうか。

 計算しつくされた構成

 「ネットで話題になることまでは想定していませんでした」。阪神電気鉄道の担当者はSNSでの盛り上がりに戸惑いを隠せないようだ。POPが設置されているのは、阪神電鉄のほか阪急電鉄や神戸電鉄が乗り入れるターミナル、新開地駅(神戸市兵庫区)のエスカレーター。面白い文面が多くの人の目にとまり、ツイッターにPOPの写真を投稿する人もいる。

 新開地駅の1日の乗降客は約2万3000人。大阪方面から阪神や阪急の電車を利用し、この駅で神戸電鉄に乗り換える人は約3万人に上る。乗り換えルートの途中にあるエスカレーターでは、発車間際に駆け上がってしまう人が後を絶たず、これまで転倒事故や、荷物がぶつかってトラブルがあったという。

 エスカレーターで立ち止まってもらうにはどうすればいいのか。新開地駅の40代の男性駅員が発案したのが「目にとまる」POP。「自動放送やポスターで啓発してきたが、見逃されがちだった」(阪神電鉄)だけに、男性駅員は「お客さまに『何これ!』と興味をもっていただけるような会話」を意識しながら作成。POPにフリー素材集「いらすとや」のかわいい女の子と優しそうな母親を添えた。

 「ねえ、お母さん!どうしてエスカレーター、『歩く』のダメなの?」

 女の子はこう母親に尋ねると、次のPOPで母親は「安全装置が動作して急停止するかもしれないの!ホント危ないの!」と答える。ここまではありがちな展開である。

 あどけない女の子は、さらに素朴な疑問を投げかける。

 「ねぇ、お母さん! どうして少し前までエスカレーターは『関東は左側』なのに、『関西は右側』に立ってたの?」

 女の子が何歳くらいの設定なのかは不明だが、東西の差に気づくとは、なかなか優れた観察力を身に着けた子だが、それだけではない。質問の末尾は「立ってたの?」と過去形になっている。JR各社や全国の私鉄事業者などは、エスカレーターに乗る際は片側を空けず、2列で立ち止まって乗るよう呼びかけている。あどけない女の子は、エスカレーターは立ち止まって乗らなければいけないと、ちゃんと理解していたのだ。

 よく見ると、POPでは女の子のセリフの「少し前まで」の部分にアンダーラインが入っている。「関東は左側」「関西は右側」という慣習は過去のものであると、阪神電鉄の“中の人”も強調しているのだ。ほのぼのとする母娘の会話も、実は微に入り細を穿(うが)つ、計算しつくされたストーリーであることが分かる。

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