乳がん術後11年でリンパ節に再発、分子標的薬は使える?
Q 50代の女性です。平成21年1月、乳がんと診断され、左乳房温存手術を受けました。ホルモン受容体陽性のタイプで、手術後のホルモン療法としてタモシキフェンを5年間服用し、乳房への放射線治療も受けました。今年1月、腋窩(=えきか、左脇の下)のリンパ節への転移がみつかり、リンパ節郭清(=かくせい、特定部位のリンパ節をすべて切除)を受けました。2個のリンパ節にがんがあり、最初の乳がんからの転移ということでした。その後、3月から半年間、通院で抗がん剤治療を受けました。ドセタキセルが4回、FEC療法(3剤の組み合わせ)が4回の点滴でした。9月からはホルモン療法としてレトロゾールを内服しています。セカンドオピニオンで別の医師に相談したところ、「分子標的薬の効果が期待できる」と言われました。これを主治医に伝えると、「分子標的薬を使う状況ではない」と言われ、混乱しています。
A 明らかな遠隔転移が見つかっていないとすれば、今回のリンパ節転移は局所再発であり、適切な治療を行えば根治を目指せる状況です。
Q それを聞いて安心しました。
A 最初の乳がん手術から11年経過してからの局所再発ですので、進行がゆっくりなタイプと考えられます。ホルモン受容体陽性で、ホルモン療法が効くタイプですので、いまのホルモン療法をきちんと続けていくことが重要です。
Q セカンドオピニオンの医師からは、分子標的薬のパルボシクリブやアベマシクリブの効果が期待できると言われたのですが。
A その2つの薬は、遠隔転移のある乳がんでは、ホルモン療法と併用して使われている標準治療薬です。手術後の再発を防ぐ目的の投与については、今は臨床試験でその効果を確かめている段階です。効果が認められなかったという報告がある一方で、効果が示唆されたという報告も出てきていますが、今後、有効性や安全性について、慎重に評価していく必要があります。将来、標準治療に加わる可能性はありますが、現時点では使うべきではありません。ホルモン療法だけで十分だとお考えください。