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少し寂しい「敬老の日」 コロナ禍で催し中止相次ぐ

 新型コロナウイルス感染拡大では、敬老の日(21日)にちなんだ各地の催しも中止を余儀なくされている。政府が求めていたイベント開催制限が緩和されプロスポーツなどはにぎわいを取り戻しつつあるが、感染リスクが高いとされる高齢者が集まることには、なお慎重にならざるを得ないようだ。ただ、高齢者が地域活動に参加できない事態は長期化しており、専門家は心身への影響を懸念している。

 楽しみ奪われ

 「この日を楽しみにしている方も多いのに、残念です」。大阪府寝屋川市大利町(おおとしちょう)の自治会長、中村嘉彦さん(75)は声を落とす。大利町自治会では毎年敬老の日に敬老演芸会を開催。高齢者らが踊りやマジックを披露し、中学生らも琴の演奏をしたりして交流の場となってきた。

 例年観客や出演者として高齢者約230人が参加する催しだが、今年はコロナ禍で中止。記念品と地域の子供が書いたメッセージを渡すのみになった。

 敬老の日の催しは各地で中止され、岩手県岩手町や香川県東かがわ市、和歌山県御坊市なども開催を見送った。同市の担当者は「高齢者がコロナに感染した場合、重症化リスクがあり、中止を決めた」と話す。

 盆踊り、旅行も中止

 高齢者向けイベントの中止はほかにもあり、大利町自治会では夏の盆踊りやバス旅行も中止に。寝屋川市によると、高齢者が集まって趣味や茶話会、体操などを行う活動は市内約350カ所で実施されてきたが、7月までに再開したのは35%程度にとどまるという。

 地域での活動や催しが再開されない分、高齢者が外出したり人との交流をしたりする機会も回復していない。

 健康機器開発・販売「オムロンヘルスケア」が6~7月、65歳以上の男女約千人に対し、コロナの感染拡大による活動変化についてインターネットでアンケートを実施。コロナの感染拡大前と比べて「運動量が減少した」と回答したのは53・8%だった。減少した行動(複数回答)は、日常的な買い物▽散歩▽通院-が上位に挙がり、日頃の外出が制限された状況が浮かび上がる。

 「身体の不調」について尋ねると、「感じる」と回答したのは34・5%。不調の内容(同)は、膝の痛み▽腰痛▽目の疲れ-などだった。

 運動、会話を増やす

 自粛生活によって、高齢者には要介護状態の一歩手前とされる「フレイル(心身の虚弱化)」も懸念される。日本老年医学会は、フレイルの進行を予防するためのポイントを、ホームページで提案。

 テレビのコマーシャル中に足踏みするなど、ちょっとした運動を取り入れる▽バランスの良い食事をとる▽歯磨きの徹底と、会話して口の筋肉を動かす▽家族や友人に電話したりして交流を持ち、支え合う-などの行動を促している。

 一般社団法人「日本老年学的評価研究機構」の近藤克則代表理事は「新型コロナに感染するリスクと、自粛生活による健康への悪影響との大きさを比べる必要がある」と問題提起。「今後は3密(密閉、密集、密接)を避けたり、フィジカルディスタンス(身体的距離)を取ったりするなどの対策をした上で、できるだけ元の活動を再開することを考えるべきだ」と指摘している。

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