もし責任を感じる人がいるとすれば政府と金融機関です。対面営業の証券会社は顧客に回転売買をすすめ、銀行は預金と誤認するような売り方でリスク性の商品を販売したケースもありました。結果として顧客の資金は増えていないのです。仮に、販売した金融商品が優れた成果を出し、投資家の資産が増えていれば文句は1つも出ないでしょうし、ゆとりのある老後を迎える人が多くなったはず。しかし実態は金融庁の資料にあるように、過去20年間(リーマンショックを含め)の金融資産は投資成果を加味するとアメリカが2.0倍、英国が1.6倍になっているのに対して1.2倍と単利換算で1%の利回りとなっています。定期預金と国債で運用を続けているのと変わらないほど低いのです(金融庁「人生100年時代における資産形成」12ページのグラフを参照)。
インフレ等もあるので単純な比較はできないものの、米国のように金融資産を2倍にすることができれば、老後資金を確保することもできるでしょう。
多くの日本人が考えるべきは、自分の人生にはいくらの資金が必要かという情報です。そして、将来の不足金額を計算することです。不足額は自分の課題と考えれば、投資をせざるを得ないという結論になる人が半数、もう半数は生活保護を当てにするということになるかもしれません。いずれにせよ、自らの課題が理解できて初めて、老後資金の準備を検討します。
金融の勉強をする以前に、男性は90歳まで、女性は100歳まで生きることを念頭に資金の準備をするといいでしょう。そこで不足する金額があれば、資産運用を検討することになるのです。
【お金で損する人・得する人】は、FPなどお金のプロたちが、将来後悔しないため、制度に“搾取”されないため知っておきたいお金に関わるノウハウをわかりやすく解説する連載コラムです。アーカイブはこちら