教育・子育て

コロナ感染怖がる子供に「あきらめて」 大阪法務局の返答に批判

 新型コロナウイルスに感染することを心配し、教室で過ごすのが怖いと訴える小学生への返答は「あきらめて」だった-。小中学生の相談に対応する大阪法務局の相談事業が発した回答に批判が集まっている。子供に届いた返事の内容を母親が投稿したツイッターには1日で5万件超の反響が寄せられた。母親(43)は「子供のSOSをくみ取って書いた返事とは思えない」と訴えている。(木ノ下めぐみ)

 問題になったのは法務省が全国で展開する「子どもの人権SOSミニレター」事業。大阪府吹田市立小の男児(7)が「密な学校がこわい。オンライン授業を行ってほしい」という趣旨の手紙を書いたところ、人権擁護委員から「お友だちといっしょにいるのが好きじゃないのかな?」「学校へ行かないとそんしちゃうかもね」「あきらめて、学校でがんばってみて」などと記された返事が届いた。

 新型コロナの感染拡大に伴う休校の後、児童の通う小学校では分散登校が始まり、児童は学校の感染症対策に納得して通っていたという。だが、クラス全員が集まって本格授業が再開されると、人の多さに感染を怖がり、週2回ほど学校を休むようになった。母親が地元自治体などに「授業をオンラインで配信してほしい」と訴えたが、全国的にも対面授業の再開後にオンライン配信する取り組みはほとんど行われておらず、実現しなかったという。

 人権擁護委員からの返事に、児童は落胆した。「子供の相談に『あきらめろ』と答える大人が相手では、相談者は絶望してしまう。何のための相談なのか」。そう思った母親は、自らの考えとともに、届いた返事の画像をツイッターに投稿。すると、「怒りしか湧かない」「子供さん傷ついてないですか」といったコメントが相次ぎ、リツイート(転載)は1日で5万件を超えた。母親はあまりの反響に驚き、投稿を削除したという。

 大阪法務局によると、大阪府内からの相談への返答は、大阪法務局と府人権擁護委員連合会が担当。人権擁護委員は多様な悩みに対応できるよう研修を重ねた民間人で、任期は3年だが本人の希望で期間を延長するケースもある。元学校関係者やカウンセラーなどの有資格者もおり、府内では500人以上が法務大臣からの委嘱を受けて活動している。

 同局の担当者は相談への返答について「大阪法務局と大阪府人権擁護委員連合会の組織体として事業に当たっており、返信内容については複数で協議している」としつつ、「個別の事例には答えられない」と話した。法務省の担当者は「批判が寄せられていることは承知しており、真摯(しんし)に受け止め、大阪法務局へ指導を行う」としている。

 子どもの人権SOSミニレター

法務省が全国の法務局を通じ、小中学生からのいじめや虐待などの相談を手紙で受け付け、助言する取り組み。平成18年から始まった。チラシの裏面を切り取れば便箋と封筒になり、最寄りの法務局に料金受取人払で郵送できる。人権擁護委員や法務局の職員が、希望する連絡方法で必ず返事を出すとしており、昨年度は1万3685件の相談が寄せられた。

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