火災保険の補償内容を充実しようと水災補償を付けると、保険でカバーするリスクの範囲が増えますので保険料が高くなります。水災を補償しないと保険料が安くなるのです。保険料を安くするノウハウとして水災補償を外すという記事を読んだことのある方もいるでしょう。
たしかに保険料を下げるための節約テクニックとしては1つの方法なのですが、実際には水害の被害を受けた場合には、誰にも助けてもらえないわけですから、安易に補償を減らす前に専門家に相談するべきでしょう。
かつては35年の長期契約が当たり前
火災保険の3割は水災補償が付帯していないのですが、火災保険は要注意事項がいくつかあります。
1つ目は35年などの長期契約を締結しているケースが多いことです。今は火災保険の最長契約期間は10年ですが、それ以前の火災保険は住宅ローンの借入期間である35年の長期契約に加入することが当たり前でした。住宅ローンの貸し手である銀行などの金融機関が、火災保険の保険金に質権を設定し、いざ火災などが発生した場合に、保険金と住宅ローンを相殺することができるようにしていたのです。
このような長期契約が当たり前であった時代には、火災保険は普通火災保険と住宅総合保険という名称で、火災リスクのみ補償するプランとあらゆるリスクを補償するプランの2つしかプランを選ぶことができませんでした。
火災リスクのみであれば保険料が安くなり、あらゆるリスクを補償すると保険料は高くなります。35年の長期契約の場合、長期契約の割引があるとはいえ、35年分の保険料を一括払いします。そのようなケースであえて高くなる保険を選ぶ人がどれだけいたでしょうか。おそらく、ほとんどの人が火災リスクのみを補償する普通火災保険を契約したことでしょう。
今でこそ、各種リスクを付保する・付保しないを選択できますが、かつては火災リスクかオールリスクか、安いか高いかの選択だったのです。今のように水害が多くなければ火災リスクのみのプランを選ぶことが合理的であったと考えられます。
知らぬ間に期間満了で無保険状態も
もう1つの注意事項は、35年経過した火災保険が更新されていない場合があることです。2019年に千葉で台風による被害が発生した際、保険期間が切れていて無保険状態の住宅があったということです。しかも、その事実に住宅の所有者が気付いていなかったというのです。なぜ知らずに保険期間が終わっているということが起こるのでしょう。