スマホで入力、文字識別が容易に
実証実験は、NECの協力を得て、浜松市、岡山市は19年11月から12月、相模原市は19年12月に、それぞれ3週間ほどの日程で行われた。実証実験の流れはこうだ。手続きを希望する外国人が、まず自分のスマートフォンから、インターネットを通じて、届け出入力システム(中国語やベトナム語など8か国語に対応)にアクセス。住民基本台帳の作成や国民健康保険に必要な申請情報を入力すると、QRコードが生成される。
次のステップとして、来庁者はスマートフォンの画面上に表示されたQRコードを、窓口に設置された専用端末で読み取り、各自治体の届出の受付端末に情報を自動入力する。在留カードを持っている場合には、券面をOCRで読み取り、届出情報に追加する。在留カードで届出情報を補完することで、情報の精度を上げるためだ。この後、職員が届出書を紙で出力し、申請者が署名する。自治体は紙で保管しなければならず、それぞれ保存年限が決まっている。最後にRPAによる住民記録システムへの自動入力が行われる。
実際、実証実験に参加した職員や、来庁した外国人はどのように感じたのか。岡山市の藤原課長補佐は「来庁者からは『分かりやすい』『スムーズに操作しやすい』など、反応は上々だった」と振り返る。また「今回は実証実験だったため、外国人が来庁してから情報を入力してもらったが、来庁前に入力が完了すれば大きな時間短縮も期待できる」と話す。
相模原市緑区役所区民課の藤田課長は「外国人向けの時は職員が機器の扱いに慣れていなかったこともあり、時間がかかったが、経験値が上がるにつれてスムーズに運用できた」と手応えを語る。同課の野口翼主任は「RPAに慣れていない職員もいるため、エラーが出た時に、慌ててしまうこともあった。使う側も慣れていく必要がある」と今後の課題を挙げる。
3市の担当者ともに「住民の皆様には来庁前入力にご協力をいただく、職員は機器の扱いに慣れる、となれば、時間短縮につながることは間違いない」と口をそろえる。人手不足の中で、窓口業務の効率化はどの自治体でも喫緊の課題になっている。幹事市の浜松市は今後、政令市の会議などで今回の実証実験を紹介する計画を立てている。
一方、相模原市は、今後の窓口業務の改善につなげるために外国人を対象にした実証実験の後に、日本人に対しても同様の実験を行った。実験では副次的な効果も得ることができたという。