学校再開、まずは「ストレス軽減」を 教員のメンタルも注意
長期の休校から学校生活に戻る子供たちには大きなストレスがかかり、精神面への特別な配慮が必要だ。不登校やいじめについて研究する公益社団法人「子どもの発達科学研究所」(大阪市)は教育関係者に対し、「学習に戻る準備期間として、まずはストレスの軽減を第一の目的にして」と訴えている。(藤井沙織)
「たとえ表面上、元気に見えたとしても、全ての子どもが影響を受けている可能性があります」
教育関係者が配慮すべき事柄として、同研究所が5月中旬にまとめた「学校再開へのメッセージ」では、こう説明する。
先生や友達に会えなくなるなど日常が失われたことは、子供にとって大きなストレスだ。同研究所の主席研究員、和久田学さんは「子供は気持ちをうまく表現できず、ストレス解消法も知らない。ニコニコしていても、抑鬱状態にある可能性がある」。特に、コロナ禍で家庭が経済的に逼迫(ひっぱく)▽保護者が医療従事者▽家族や親族らが感染した-などの場合は、より影響を受けていると指摘する。
学校の再開によって自然に回復する子供もいるが、「抑鬱状態を引きずると、いじめや暴力行為、不登校などに発展するリスクが高まる」と和久田さん。いじめを防ぐためには、子供たちにストレスを友達に向けてはいけないことや、イライラしたら先生に相談するよう伝えることが有効という。また、子供たちは不安から大人の言動に敏感になっているとして、教員が機嫌よく安定した態度で接することも大切とした。
一方、教員にとっても、3カ月に及ぶ休校は経験のない事態だった。休校中は家庭学習の課題を作り、再開後の授業計画を練るなど手探りの対応が続いた。今後は授業に加えて感染症対策もあり、負担は大きい。
教員のメンタルケアに詳しい奈良大の太田仁教授(社会心理学)は「経験したことのない事態に遭遇すれば、誰もが緊張し、ストレスを感じる」として、教員のメンタルにも気を配る必要があると指摘。ストレス解消には、子供たちや気の合う同僚との積極的なコミュニケーションや、自分だけの時間を1日45分間は持つことが有効だという。
太田教授は、悩みが解決しなければスクールカウンセラーに相談することを推奨する。「よく『このレベルの悩みで相談していいのか』と悩む教員がいるが、相談しようかなと考えた時点で相談していいレベル。迷わずに利用して」と呼びかけている。