ヘルスケア

注意が必要な不眠症 健やかな眠りで脳を健康に

 【脳を知る】

 5月のすがすがしい季節になりましたが、新型コロナ感染症により外出が制限され、日光を浴びたり体を動かしたりする機会が少なくなっていると思います。

 身体活動の低下は、心身に悪影響を及ぼしかねないので注意が必要ですが、見過ごされがちなのが睡眠です。今回は不眠症についてお話しします。

 日本人の21%が不眠に悩んでおり、15%が日中の眠気を感じているといわれています。不眠症は、寝つきが悪い▽寝た感じがしない▽途中で目が覚めてしまう▽朝早く目が覚めてしまう-という症状に加えて、日中の活動が低下する▽気分が沈む▽イライラする-などの精神症状、あるいは運動機能に問題がでてくる場合をいいます。

 標準的な睡眠時間は7~8時間といわれていますが、個人差があるので時間そのものにあまりこだわらないほうがいいでしょう。たとえ睡眠時間が短くても日中に何も問題がなければ不眠症とは言いません。

 睡眠は体や脳を休めるだけでなく、記憶を定着させたり体の成長を促したりする役割も担っているので、不眠は体に良くないことは当然ですが、最近の研究では不眠症があれば、糖尿病や高血圧になる危険性が3~4倍高くなり、逆に不眠症を治すことでそれらが改善されることがわかってきました。

 糖尿病や高血圧は脳卒中や認知症の原因となるので、不眠症は脳の病気を引き起こす遠因になるともいえます。

 不眠症なら睡眠薬を飲んだら解決!? いえいえその前に、不眠症の原因となる睡眠習慣を見直しましょう。年齢とともに睡眠時間は短くなって当然なので、まずは睡眠時間を過剰に気にしないようにしてください。そのうえで、眠くなってから床に就く▽寝る前に読書やテレビ、スマホなど目を使うことを避ける▽何時に寝ても毎日同じ時間に起きる-といったことを心がけてください。

 眠くもないのに床に入っても、眠れず不安になってさらに眠れない、と逆効果になりかねません。光の刺激で睡眠覚醒(かくせい)リズムはコントロールされているので、朝は同じ時間に起きて日光を浴びて脳を目覚めさせ、夜はできるだけ暗くして脳を休めましょう。

 また、就寝の90分前に入浴して体を温めることも有効といわれています。もしそれでも眠れず日中に眠くなれば、できれば3時までに20~30分程度の短い昼寝をしてください。それだけで十分に夜間の睡眠不足を補う効果があります。

 不眠で悩んでいる人は、脳の健康のためにも睡眠習慣を見直してみてください。(済生会和歌山病院副院長 脳神経外科部長 小倉光博)

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