《※現在、新型コロナウイルスの影響で【乗るログ】の取材を自粛しています。再開するまで当面の間、過去に注目を集めたアーカイブ記事を厳選して再掲載します。「そういえばこんなクルマも紹介していたなあ」と少しでも楽しんで頂ければ幸いです。記事の内容は一部を除き、基本的に掲載当時の情報となります》
【2016年2月掲載】とくに自動車に興味がなくても、ダイハツの軽トールワゴン「ウェイク」のコミカルなテレビコマーシャルにピンとくる人は多いのではないだろうか。人気俳優の玉山鉄二が演じる男気たっぷりの“あんちゃん”が、弟や恋人のために愛車の屋根を切り取るなど大胆に改造してしまう、あのCMだ。キャッチフレーズの「ドデカクつかおう。ウェイクだよ。」は、いつまでも耳に残る強烈なインパクトがある。そして最近、新しいバージョンのCMを見たときに、ふとこんなことを思った。日本人離れした巨体の持ち主でも、ウェイクを「ドデカク」使えるのだろうか…。思い立ったが吉日、ということで、すぐにダイハツ広報部に電話をして車両を手配。体重140kgの若手お笑い芸人を半ば強引に連れ出し、突飛でどうでもいいようにも思える実験的な企画がスタートした。(文・写真 大竹信生/SankeiBiz編集部)
大自然でレジャーを楽しむ
2014年秋に販売開始したウェイクは、2013年の東京モーターショーに参考出品した「DECA DECA(デカデカ)」をベースに市販化された。最大の特徴はなんと言っても、トヨタのランドクルーザーとわずか45mmしか変わらない1835mmという背の高さだ。これは軽自動車ナンバーワンの長身である。圧倒的な居住スペースと積載力を誇り、普段使いからアウトドアまでシーンを問わず対応できる4人乗りワゴンだ。見るからにバランスの悪そうなノッポな車体と、LEDで縁取ったヘッドランプがとても個性的で、初めて見たときからすごく気になる存在だった。
身長172cm、体重63kgの私のような平均サイズの日本人男性なら、快適に使えて当たり前のはず。どうせならドデカク使ってみたい。ウェイクは100kgオーバーの男でも、何の不便もなく楽しむことができるのだろうか。彼らにも優しくしてくれるのだろうか。どうせ検証するのなら、東京から脱出して大自然の中でレジャーを楽しみたい。よし、寝袋やマットレスを積み込んで、1泊2日の予定でワカサギ釣りに行こう。もちろん、夜はウェイクで車中泊だ。
想像以上の広さ
クルマは手配した。次に必要なのは100kg超えの大男だ。ウェイクに負けじと、私の周りにいるナンバーワンの巨漢に電話してみる。
「ブチ、週末にオレとドライブに行かない? ウェイクっていうクルマに乗って河口湖にワカサギ釣りに行こうよ。夜は車中泊。ちょっと過酷だけど、どう?」
「えっと、土曜日は昼からお台場でオーディションがあるので、そのあとなら大丈夫だと思います! 日曜日は午後からテレビ収録があるので、午前中だけならOKです!」
電話の相手の名前は杉渕敦。大手芸能事務所の浅井企画に所属する若手お笑いコンビ、オーストラリアのツッコミを担当している(※現在は解散、ピンで活動中)。彼とはかれこれ10年以上の付き合いになる仲で、私のちょっとした後輩であり友人でもある。
そんなことよりも、彼は身長181cm、体重140kgという並外れた巨体の持ち主。彼は望んでもいないだろうが、今回の企画に彼以上の人材はいないと勝手に白羽の矢を立てた。ちなみに彼の芸風は、見た目そのままに体のデカさを生かしたデブキャラだ。
ロケ当日を迎え、昼過ぎに杉渕をピックアップする。
「お疲れさん。今日は来てくれてありがとう」
「お疲れ様です! これがウェイクですか。けっこうカワイイ感じですね。思っていたよりもデカイです」
杉渕が上着を脱ぎ、巨体を揺らして助手席に乗り込む。とにかく暑いようだ。それにしても、覚悟していたとはいえ彼もデカイ。運転席にまで迫ってくる威圧感がハンパないのだ。
「お前、やっぱりスゴイな! こっちまではみ出てるぞ。ちなみにアームレストは下ろせる?」
「はい、なんとか下ろせます。さすが、このクルマ広いですよ!」
「さすが…じゃねーわ! アームレストが折れそうじゃねーか!」
この日はあいにくの雨模様。杉渕が座ったとたんに窓ガラスが曇り始めた。とにかく、前方がほとんど見えない。リアウインドウも真っ白になってしまった。慌ててデフロスターをONにするが、そう簡単には効かない。ウェイクの広大な車内を一瞬でホワイトアウトさせる杉渕の発熱力にビックリだ。
「ブチ、お前のせいで窓が曇って信号が見えねーぞ」
「すみません! とりあえず車内の写真を撮っておきます!」(←さすが)
「今日は仕事だぞ。まじめにやれよ」
「大竹さん、オレひとつもふざけていません!」
ちなみに彼の体格に近い現役力士を調べてみたところ、女性にも人気の遠藤関とほぼ同じことが分かった。となりに力士を乗せてドライブしているようなものだ。圧迫されるわけだ。体重140kgは、660ccエンジンのおよそ2機分の重さ。そんな彼が助手席に座れば、クルマはどうしてもフロントヘビーになる。前席に“定員オーバー”の3人で座っている計算になるのだ。
中央道はドシャ降り 霧で視界は最悪に
そんな杉渕をウェイクはしっかりと受け止めてくれている。天井が高いのでヘッドクリアランスはまず問題ない。アームレストを上げれば横幅にも余裕が出てくる。このクルマはインパネシフトを採用しているので、運転席と助手席の間に遮るものがなく、足元のスペースはとても広いのだ。
「オレみたいなデブはまともに座れないクルマもあるんで、ウェイクの快適さに正直驚いています。本当に広いですね」
中央道を走っていると、だんだんと雨脚が強まってきた。天気はこれから荒れるという。ワカサギ釣りは大丈夫だろうか。
「ブチ、雨が心配だな。釣り、大丈夫かな…」
「オレ、ワカサギの天ぷらが大好きなんですよ。楽しみですね!」
人の天気の心配をよそに、食べ物のことで頭がいっぱいの杉渕は意気軒昂だ。