ヘルスケア

治療の切り札ECMO 装着患者の3分の2が回復も準備は足りているのか

 新型コロナウイルスに感染し、肺炎が重症化した患者に使用される人工心肺装置「体外式膜型人工肺(ECMO=エクモ)」。日本集中治療医学会などによると、4月20日までに新型コロナに感染した重症患者90人が装着し、治療を終えた患者の3分の2が回復した。感染拡大とともに重症患者の増加が見込まれる中、国内の準備は足りているのか。

 肺休ませて機能回復

 一般的に新型コロナで肺炎を発症し、息苦しさを訴える患者には酸素吸入が行われ、悪化した場合は人工呼吸器が装着される。鼻や口、もしくは首を切開(気管切開)した場所からチューブを通して空気を送り込む医療機器で、強制的に肺に空気を送り込み人工的に呼吸している状態を作る。

 しかし、病状が進むと肺は酸素を取り込むこともできなくなる。機能低下した肺の代わりの役目を果たすのがECMOだ。足の付け根の静脈などから血液をいったん体外に取り出し、人工肺で酸素を取り込んでから体内に戻す。ECMO自体が肺炎を治すわけではないが、使用中は肺を休ませることができるので、その時間を利用して肺の回復を図ることが可能という。

 日本集中治療医学会などの集計では、4月20日までに新型コロナでECMOを装着した90人のうち52人が治療を終了、67%にあたる35人が回復し、17人が亡くなった。残る38人は治療継続中だ。同学会など関連3学会の医師らで作る「日本COVID-19対策ECMOnet」の竹田晋浩(しんひろ)代表によると、新型コロナ以外の呼吸器不全でECMOを使用した際は7割前後が回復するといい、新型コロナにも同程度の効果が期待できるといえる。

 技術必要も足りぬ人材

 では、重症化した患者に使う医療機器はどれぐらい準備されているのか。

 日本呼吸療法医学会と日本臨床工学技士会が2月中旬、臨床工学技士が所属する病院を対象に行った調査によると、全国1558施設にあった人工呼吸器は2万2254台。一方、ECMOは1412台で、都道府県別にみると、東京の196台が最も多く、大阪府の103台、埼玉県の74台、愛知県の70台と続いていた。

 竹田代表によると、海外の医師にECMOの台数を確認したところ、世界有数の集中治療病床数があるドイツで千台程度、他の欧州諸国はもっと少なく、「台数だけを見れば日本は少ないわけではない」とする。

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