つい最近、過去問テキストをめぐる、その程度において滅多にはなさそうな経験をした。第9回では、過去問の取り組み方などについて、一般論と持論を述べさせてもらったが、過去問にはまだまだ留意すべき点がある。
「どっちの答えを信じてよいか…」
ある日の算数の授業前、某国立大学附属中学校を受験予定の6年生の女子が相談にやって来た。
「先生、理科なんですけど…」
と2種類の過去問テキストの解答・解説ページを開いて言うには
「この2冊の解答を比べると、答えが違うところがいっぱいあって、どっちを信じていいのか分からなくて…」
と困惑気味である。
その子は普段から、授業態度がしっかりしていて、宿題もきちんとやってくるだけでなく、描く図もきれいで分かりやすいことからも、かなり几帳面でしっかりした性格らしく、2冊の過去問の解答を比較して、答えが異なっている小問の番号に印を付けて持ってきた。
すべて選択問題なのだが、設問の形式は「正しいものを1つ選べ」だけでなく、「正しいものを2つ選べ」「正しいものをすべて選べ」「正しい組み合わせはどれか」「誤っているものを1つ選べ」「誤っているものをすべて選べ」…という感じで、5~10の選択肢の中からの複数回答が多くを占めている。
その子が両テキストの解答の相違をチェックしたところを見ると、なんと! 全25問中10問ほどに相違がある。さっそく、何問かについては問題文も見てみたところ、必ずしもどちらかのテキストが100点でもう一方が60点という感じでもなく、「両方とも80点くらい?」という印象であった。
その子も出席する授業の直前だったので、「国語の授業が終わったら来なさい。それまでにひととおり解いておくから」と、自分の授業時間のほうが40分ほど早く終わるということもあり、お互いの予定が終わってから結果を伝えることにしたのだが…。
手前味噌で恐縮だが、中・高受験の理科には特段の自信を持っている筆者としては、「この答えが満点!」と、完璧な解答を渡したいところである。
で、結果はというと…25問中22問は(両テキストの解説の妥当性も吟味した上で)自信を持って「これが正解!」と言えるが、うち1問は「この2つのうちのどちらもあり得る(書かれていない条件や実験環境による)」、あとの2問は「これで間違いないと思う(が、書かれていない条件によってはこっちが正しい可能性がある)」というものだった。