相次ぐ「シュリンクフレーション」 いつもの菓子…小さく 牛乳パックは容量減少
気づけば菓子が小さくなっていたり、牛乳の量が減っていたり…。値段は据え置き容量やサイズを小さくする「シュリンクフレーション」が相次ぐ。原材料費の高騰や消費量の低迷など、メーカー側はさまざまな理由を挙げるが、消費者にとっては実質的な値上げといえる。消費税が8%から10%となり、シュリンクフレーションは拡大、消費者にとってちょっぴり寂しい「小さい秋」になっている。(大渡美咲、田中徹)
◆事実上の値上げ
1日の消費増税前に、企業の動きは活発化した。ブルボンは9月17日出荷分から、人気商品「ルマンド」や「アルフォート」などの5種類のビスケット商品の内容量を変更すると発表。ルマンドは13本から12本に、アルフォートは11枚から10枚になった。
平均で約9%の内容量減で、実質的な値上げ。同社は「原材料や燃料費、運送費の値上がりが続き、自助努力だけで対応するのは困難」としている。
カルビーも7月22日、人気菓子「かっぱえびせん」の1袋の内容量を90グラムから85グラムに減らした。輸送費や原材料価格の高騰が要因で、同社は「自助努力のみでは価格維持することが極めて困難になった」と説明している。
こうした容量を小さくするなどし、事実上、値上げする「シュリンクフレーション」は相次ぐ。公式的に発表していないまま小さくなっている商品もあり、インターネット上では《ステルス値上げ》《スモールチェンジ》などといった声も上がっている。
ハウス食品はレトルトカレーの「カレーマルシェ」を平成29年2月、1パックの内容量を20グラム減らし180グラムにした。商品のリニューアルに際し、電子レンジ対応の特殊なパッケージに変更。その際、空気抜きの穴を設ける必要があったが、外箱のサイズは変えたくなく、担当者は「どうしても容量を少なくせざるを得なかった」と訴える。
◆戦略的な変更!?
一方、明治は28年に「おいしい牛乳」を1リットルから900ミリリットルに変えた。自社の飲用実態調査で牛乳の消費量が過去10年間で1割落ちたとする結果や1リットルを飲みきるまでの日数が延びているとする状況を勘案し、容量を減らす決断に踏み切ったという。担当者は「牛乳を余ることなくおいしく飲んでいただきたいという思いがある」と力を込める。
不二家の人気菓子「カントリーマアム」もインターネット上で、「小さくなった」と指摘され、以前の商品と現在の商品を並べた画像が話題を呼んでいる。ほかにも容量減を変更前後の商品で比較する消費者も多く、注目は高まる。
ただ、不二家は、カントリーマアムに関し、単純に容量を減らしているわけではないとする。原料高騰により枚数が変わるほか、季節や地域ごとにさまざまな味を投入するなど戦略的に販売しているとし、担当者は「容量や枚数はその都度変えているものだ」と回答している。
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■敏感な消費者、難しい価格転嫁
東京大大学院の渡辺努教授(マクロ経済学)の話「原材料費の高騰などが要因の商品小型化の波は以前からあるが、メーカー側も、小型化には製造工程を変えるなど費用と手間がかかる。値上げするにしても、世の中の賃金が思うように上昇せず、消費者が価格に敏感になっている社会情勢では、(価格を)上げたくても上げられないのでは」
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【用語解説】シュリンクフレーション
商品の値段が変わらないまま容量が小さくなる実質上の値上げのこと。英語で縮むという「シュリンク」と、物価が上昇する「インフレーション」を合わせた造語。容量の変更に気がつかない消費者も多く「隠れ値上げ」とも呼ばれている。