個性的なデザインの宿命
公式的にはマイナーチェンジだとはいえ、フルモデルチェンジと見紛うばかりの大改良が加えられた三菱デリカD5は、いい意味でもそうでない意味でも、議論白熱。話題が沸騰した。
フットワークは大幅に洗練した。内装の質感も圧倒的に進化した。クルマとしての成長には異論はない。だが、フロンマトスクに関して賛否両論渦巻いた。正面から見ると「X」文字でイメージできる。切れ味鋭いカミソリのようでもあり、おどろおどろしい妖怪のようでもある。当初は、否定的な意見が少なくなかったように思うのだ。
だがそれって、新しいデザインにチャレンジするとそうなる。見慣れるまでには違和感が強いから、ついつい「昔の方がよかったのになぁ~」となる。だがそれも、最初の数カ月だけだ。街中で何度か見かけるようになると、目が馴染んでくる。舌の根も乾かぬうちに「このくらい刺激的なほうがいいよね」となる。いけしゃあしゃあと、手のひら返しされるのが個性的なデザインの宿命でもある。
レクサスのスピンドルグリルしかり、クラウンの王冠グリルしかり。流石にプリウス顔はいつになっても馴染めず、ついにはトヨタ側が待てなくなって改良したけれど、一般的に個性の強いデザインは初めは否定的な意見に晒されるものだ。
つまりデザインは時間の経過を予測する作業でもある。しかも感覚的な部分だから、なかなか難しい。「答えのない答え探しは骨が折れる」と、トヨタのとあるデザイン担当役員がそう言って笑っていたっけ。