ただし! 年金は公的年金と合算される
ただし、ここで注意してほしいことがあります。退職金を年金で受け取る場合、国民年金や厚生年金などの公的年金と合算して「公的年金等にかかる雑所得」の金額を計算します。会社員であった男性が65歳に受給している厚生年金額はおよそ210万円と言われています。非課税となる120万円はすでに超えているため、65歳以上の人が退職金を年金で受け取る場合、一般的には公的年金控除を十分に活用できず、所得税・住民税がかかることになります。
社会保険料にも影響を与える
また、退職金を年金で受け取った場合、国民健康保険料や介護保険料などの「社会保険料」にも影響を与えます。
国民健康保険料は、所得に応じて課税される「所得割」と加入する世帯の人数に応じて課税される「均等割」で構成されます。所得割を計算する時の所得には、不動産所得・事業所得・給与所得・雑所得・一時所得などが含まれます。つまり、退職金を年金で受け取る場合は、このうちの雑所得に該当するので、雑所得が増えた分だけ、国民健康保険料が高くなるのです。(なお、一時金で受け取る場合は退職所得として扱われるため、国民健康保険料や介護保険料に影響を与えません。)
国民健康保険料の所得割料率は、各市区町村によって異なりますが、おおよそ10%です(例:東京23区、医療分7.32%、後期高齢者支援金分2.22%)。
また、一般的に介護保険料も所得区分に応じて決まり、所得区分が上がると、介護保険料も高くなります。
このように、退職金を年金で受け取る場合には雑所得が増えることになるため、社会保険料への影響も考慮に入れましょう。
一時金と年金の比較まとめ
退職金は、一時金なら退職所得、年金なら雑所得として扱われ、それによって税金や社会保険料の影響が異なることを見てきました。
一概には言えませんが、税金・社会保険料を加味すると、一時金よりも年金の方が不利になるケースが多いです。
次は、30年間勤務し、65歳で退職金2000万円をもらえる予定のAさんのケースで考えてみましょう。
「30年間勤務し65歳で退職金2000万円」のAさん
Aさんは、35歳の時に現在の会社に転職し65歳に定年退職を予定しています。退職金は、65歳時に一時金でもらった場合は2000万円。そのうち、一部を年金で受け取ることもできます。勤続年数が30年の場合、退職所得控除が1500万円なので、500万円について、一時金でもらうべきか、年金でもらうべきか迷っています。
Aさんの会社では、退職金500万円を年金でもらう場合、毎年27.5万円を20年間、合計550万円受け取ることができます。