難聴を放置しておくことによる一番の問題は、コミュニケーションのトラブルだ。
「聞き取りが困難になると、人と話すのが億劫になります。あるいは、無意識に声が大きくなり、『場の空気を読めない人』と厄介者扱いされてしまう場合もあります。会話の不足、仕事の喪失などが重なると、難聴者はそうでない人よりもうつ状態や自殺に至るケースが多いとされています」
家族間のコミュニケーションが少ないことも、難聴悪化の一因になる。
「帰宅後、テレビをつけて家族から話しかけられても『疲れているから』とシャットアウト。それでは、本人も周囲も、難聴に気付けません。家族間で難聴を防ぐには、ひそひそ話ができるくらいの距離感にしておくことです」
稼ぐ人ほど「補聴器」を活用
難聴が進んだ老人は人とのコミュニケーションが減り、認知症のリスクが高くなることもあるという。このような最悪の事態を防ぐには、聞き取りに不自由を感じ始めたら、すぐに補聴器を使用することだ。
「補聴器は豊かなコミュニケーションのための必須アイテムです。日本補聴器工業会が実施した調査で、補聴器を使用するビジネスマンと使用しないビジネスマンに年収を尋ねたところ、補聴器を使用するビジネスマンでは、1000万円以上が9%、2000万円以上が3%もいました。一方、補聴器を使用しないビジネスマンでは、1000万円以上が4%、2000万円以上はほとんどいないという結果に。私の診察経験からも、補聴器の使用を希望するのは、医師、弁護士、外交官といった職業の方が多いと感じます。また、欧米でも、エグゼクティブは若いうちから補聴器を使用しています。重要な会議や取引を行う彼らにとって、補聴器は欠かせないビジネスツール。老後も稼ぎたければ、ぜひ補聴器を取り入れてください」
補聴器というと、装着に煩わしさを伴うというイメージがあるかもしれない。しかし、近年は小型化が進み、機能も発達している。耳の陰に隠れるほど小さい耳かけ型や、耳栓のように収まる耳あな型、さらには、スマホと連動したハイテク補聴器など豊富に揃う。