SankeiBiz for mobile

ダイキンの大胆な女性支援策 「働きたい社員は早く復帰せよ」

ニュースカテゴリ:暮らしの仕事・キャリア

ダイキンの大胆な女性支援策 「働きたい社員は早く復帰せよ」

更新

ダイキン工業で育休から復帰した社員に対し開かれたセミナー=大阪市北区  「女性支援=子育て支援」といった企業の風潮に、空調大手のダイキン工業(大阪市)が一石を投じた。同社が今春導入したのは、出産から半年未満で職場復帰した社員に対する保育費補助の増額制度。働く女性への支援策の一つとして安倍政権が掲げる「育児休業3年」に逆行するかのようにもみえる。同社の施策のキモにあるのは「男女の違いは出産だけ」という考え方。長期の休業による女性の復帰意欲減退を回避し、働き続けることでキャリアアップを狙う。

 井上会長の「本気」

 「女性社員が活躍することが会社の業績につながる取り組みを進める。他社にはない本気の施策をやる」

 平成23年1月。井上礼之会長は年頭あいさつで社員らにメッセージを送った。会長の「本気」に驚いた社員も多かったが、社内の雰囲気は相当変わってきたという。

 ダイキンの新制度は、原則1年の育休を半年未満で切り上げた社員を対象とする支援の上乗せだ。支援は保育園の延長保育、ベビーシッター利用料のほか、子育てを助けてもらうため親を呼び寄せる旅費も含み、復職後1年間の限度額を従来の年30万円から60万円に拡大させた。

 一般的な企業の取り組みは子育てへの支援だが、早期に復帰したい社員に対する費用援助は珍しい。

 安倍政権の3年育休には女性の側から異論もある。長期の休業は「女性の成長を妨げる原因になる」「長くなるほど会社の負担になるため、女性の就職がさらに不利になる」などだ。

 人事本部人事企画グループの池田久美子担当課長は「女性社員は男性と同様に修羅場を経験し、競争社会で勝ち抜く覚悟を持ってほしい」と話す。意欲向上が狙いなのだ。

 ダイキンの女性支援をみると、キャリアアップを促す施策が目立つ。平成4年4月の育児休暇制度新設当初から、同社の主眼は「育児と仕事の両立」にある。

 13年には一般職と総合職の区分をなくし、女性の仕事領域を拡大。19年度には育児に携わるためのフレックス勤務を「小学校就学前」から「小学校卒業まで」に延長するなど、さまざまな施策を打ち出した。意欲のある女性が出産・育児というライフイベントを乗り越え、活躍する場や機会を広げたのだ。

 「男女の違いは出産のみ」という考えは、働き続けることこそ能力向上につながるという考え方につながっている。

 ダイキンが相次ぎ女性支援策を打ち出すのは、同社女性社員の年齢構成にも理由がある。戦力として大きく成長する可能性のある30代前半が女性社員の6割を占める。多くが今後産休や育休を迎えるため、継続して仕事に打ち込める支援が必要と考えたからだ。

 ただ、平成26年4月時点の同社の女性管理職の数は全体の973人のうち約2・3%の22人にとどまる。政府が32年までの目標に掲げる女性管理職比率3割には、まだ遠いのだ。

 在宅勤務も復帰のため

 ダイキンはこのほか、短時間勤務からフルタイム勤務への転換を促すため、実験的に週1回の在宅勤務も導入した。短時間勤務は「長期化するほど本人の成長にとってマイナス」(池田担当課長)になるため、少しでも早くフルタイム勤務になり、仕事の勘を取り戻してもらうことが狙いだ。

 年内には、女性社員に執行役員級の相談相手を付ける「メンター制度」を正式導入する方針だ。自分のキャリアの方向性をメンターと話し、共有し合うことで、目標を明確にし、成長を促していく。(中山玲子)

ランキング