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大学開発の「食」が増加 飲食店・通販で高まる人気

ニュースカテゴリ:暮らしの生活

大学開発の「食」が増加 飲食店・通販で高まる人気

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近大マグロを食べることができる近畿大学水産研究所=東京都中央区  研究の一環として開発に取り組んだ食品を販売したり、アピールしたりする大学が増えている。暮らしに密着した「食」という分野で、研究をより身近に感じてもらいたいとの思いもあるようだ。(油原聡子)

 近大卒の魚

 ランチタイム時の東京・銀座。近畿大学(大阪府東大阪市)が養殖した魚が食べられる料理店「近畿大学水産研究所」は開店前から長い列ができる。客の目当ては「近大マグロ」だ。近大マグロは、基本的に大学が人工孵化(ふか)させた卵から成魚まで一貫して育てたクロマグロ。開店30分前から並んでいた埼玉県熊谷市の女性(64)は「近大マグロが目当てできました。身が軟らかくておいしい」と満足げだ。

 同大は水産資源の保護などのため、クロマグロをはじめ、さまざまな魚の完全養殖について研究。平成14年にはクロマグロの完全養殖に世界で初めて成功し、産業化の道を探ってきた。一般の人に広く、「近大卒の魚」や研究成果を知ってもらおうと昨春、大阪に1号店、昨年12月に銀座店をそれぞれオープンさせた。両店ともディナータイムは1カ月先まで予約でいっぱいという。

 同大の関連会社経営支援部の石原克人さん(31)は「養殖魚は安全性も質も高いということを知ってもらいたかった。もともと食べてもらうために作っているので、一般の方の声を聞いて研究にも生かしたい」と説明する。

 ブランドに

 大学の研究成果である食品は通信販売で購入できるケースもある。

 玉川大学(東京都町田市)はオンラインストア「玉川学園購買部」で、開発に関わったオリジナル商品を販売している。同大はハチミツの研究が有名で、以前からハチミツ商品の通販を行っていた。ハチミツのブランド化を目指し、22年にオンラインストアでの販売を始めた。

 特徴は国産ハチミツへのこだわりで、観光協会などにも卸している。評判は上々で、通販を含め、年間で人気商品のアイスクリーム(260円~)は約4万6千個、ハチミツ(1030円~)は1万1千本以上も売れているという。

 学校法人「玉川学園」購買部の伝法谷一仁課長は「研究成果の社会還元が目的なので、良いものを求めやすい価格で届けられるようにしています。商品は国産ハチミツにこだわっているので、国内の養蜂家の支援も目的です」と話す。

 食品を通じ、研究の成果を社会にアピールする大学は増えている。

 新宿高島屋(渋谷区)で5月28日から6月3日まで開かれた「大学は美味(おい)しい!!」フェア。7回目となった今回、過去最多の38大学が参加した。会場は多くの客でにぎわい、100食限定の定食が午後には連日売り切れとなるなど注目が集まった。

 出展大学が農学部など、いわゆる「食」に直接関わる学部だけではないのも最近の特徴だという。立教大学は、観光学部が長野県の地域応援プロジェクトの一環として開発したジェラートを販売した。

 フェアを主催したNPO法人「プロジェクト88」の高橋菜里理事長(23)は「せっかく研究しても、なかなか一般の人にアピールできる場がない大学も多い。大学に埋もれている研究成果を一般の人に伝える機会となれば」と話している。

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