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常に勝ち続ける…現役トップディーラーの宿命 必要なものは何?

ニュースカテゴリ:暮らしの仕事・キャリア

常に勝ち続ける…現役トップディーラーの宿命 必要なものは何?

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 相場がいいときも悪いときも、常に勝ち続けることがプロディーラーの宿命。マスコミに登場する機会が制限されている彼らの投資手法は、個人投資家にはなかなか伝わらないといわれています。この特集では、現役のトップディーラーが自ら筆を執って、個人投資家にプロの投資手法を伝授します。

 ディーリングに必要なものは何?

 プロのディーラーというと、株式市場で巨額の資金を使ってトレードをする華々しい職業……、そんなイメージがあるかもしれません。確かにそういう面もありますが、忘れてはならないのがディーラーとは職業であり、続けなくてはいけないということ。たかだか2~3年稼いだくらいでは職業とはいえません。しかも人の入れ替わりが激しく、生き残れる人はほんのひと握りと言っていいでしょう。

 ディーリングを続けていくうえで最も重要なのは、精神力です。年齢を重ねると守らなければならないものも増えてきますので、より精神的負担は増します。たとえば、「根性と度胸で乗り切れるのか?」と言われれば、答えはノーです。一時的には可能かもしれませんが、30年も続けるのは至難の業でしょう。

 継続するには、メンタルを補助しうる力を身につける必要があります。その力も数種類あり、それぞれの適性に合った方法があります。ここでは私の浮き沈みの経験や新人育成に携わった経験から、適性を考慮した投資手法やメンタルの補強方法を紹介します。「相場を張るのに必要なのは3つのCだ」--私がよく先輩から言われた言葉です。それは「Control(制御)」「Concentration(集中)」「Confidence(自信)」です。

 では、最初のCから。コントロールするべき対象はいくつかあります。まずは、ポジションコントロールです。一定の利益が上がっている状況と損失が出ている状況では、取ってよいリスクが異なります。いくら自信があっても自分のそのときの損益状況を無視してフルにリスクを取ることはよくありません。

 次がメンタルコントロール。頭に血が上って怒りに任せてポジションを取る、希望的観測で売買する、負けまくって怖がりになってしまう、舞い上がったりへこんだり過剰になってしまう状態での判断は危険を招きます。相場からのプレッシャーとどれだけ冷静に対峙できるかが大切です。

 次のCは「Concentration」です。人生に誘惑は多いもの。特にある程度のお金を手にした初期段階ではできることが増えてきたり、ついつい羽目を外して遊んでしまったりすることもあります。どんなに優秀なプレーヤーでも、相場から気持ちが離れたり、ほかのことが気がかりになっていたりすると、相場の変化をつかむことは難しくなります。相場に向かい合う際は雑念が入らないようにしないといけません。そのためには体調管理も大切です。二日酔いはいけませんね(笑)。

 最後のCは、「Confidence」です。これは一番大切なのですが、いとも簡単になくなってしまったりして持ち続けるのが最も難しいものです。ポジションに対する過信でも、欲から発生するものでもいけません。徹底した分析や失敗から学び取る姿勢がなければ自信はスルスルと逃げていきます。過信や期待だけでは、いつか大きく損失を出してしまうのです。

 以上3つのCをベースに適性に合った相場への参加方法を身につけることが大切です。

 判断材料は需給のみ。モメンタムトレードのすすめ

 企業業績は関係なし。現在の人気が判断材料

 たとえば「AKB48」が好きではなくても、世の中の流行ならCDを買ったり、コンサートにも行く。モメンタムにはそういう要素があります。

 つまり、市場ではやっている(買われている)企業の業績が現在の株価に見合うかどうかなどの判断をしないということ。企業名を知らなくても、みんなが買っているから買うというトレードです。

 ただ、重要なのは市場参加者がどの程度買いたがっているのかを見極めることです。

 企業の業績や成長性、資産や配当利回り面から見て割安かどうかなどの判断はあまり重要ではありません。なぜなら、企業は活動し続けているので、たった1日、ましてや数分で業績などは変化しないと考えるからです。それよりも昨日と今日の需給の違いや、いつもと特別な日の違いを見極める目を養うことが大切です。それには分析力よりも観察力が重要になってきます。高速取引の普及などで、板状況を見た取引はあまり効果がないといわれていますが、この観察という面ではいまだに板の変化は大切です。

 買われ方、売られ方、その時々の市場の反応、全体の動き、そういったものをリアルタイムで見ることが大切なのです。これらをチャートや価格情報のみから読み取るのは至難の業です。

 5分前と状況は変化したのか? 前場と後場では変化があったのか?

 昨日と今日ではどうかといったように違いを見つけることが需給を読み取る第一歩です。たとえば「前場に比べて下値を売る動きがなくなった」とか、「いつもよりもアグレッシブに約定したがっている人がいる」など。

 そのためにも重要視するのが出来高を伴った値動き。たとえ高値をブレイクするような動きがあっても、その後の高値もみ合いで出来高が増えない場合は信頼性が低いと判断します。逆に、出来高を伴った大陽線は継続性のある強気材料となります。実際はチャートなども併用しながらの判断となりますが、大切なことは「感じ取る力」なのです。

 株価の急騰を待ち伏せするファンダメンタルズトレード企業

 自分だけが気づいた有望株をこっそり仕込む

 切った張ったの世界に近い乗りのモメンタムトレードは、短期決戦の積み上げなので、勝ち続けるのは非常に困難。特にリアルタイム性の強い売買は個人投資家の方には難しいと思います。加えて、資産運用という観点で考えた場合は当然、長期ということも考えなくてはいけません。

 そのような点から私がお勧めするのは、「ファンダメンタルズ型ロング・ショート取引」です。判断しなければいけない期間が長期になるほど、戦争や災害等の不測の事態が起こるリスクも高まるので、景気や世界情勢を見通すことは難しくなります。

 ですので、ポジションをできるだけニュートラルに近づけ、マーケットリスクを取らないようにする。それにはロング・ショートがおすすめ。

 自分が将来性を感じる会社を探して、その会社の株を買う。その際、同金額か同程度のデルタ(日経平均に対する感応度を加味した金額)分だけほかの銘柄で売りポジションをつくります。

 通常は同業他社や主力株の中から割高株をショート(売りポジション)したりするのですが、個人の場合は6カ月といった信用取引の期日もありますし、売り銘柄の材料発表などのリスクもあります。ですので、信用売りの代わりに日経平均株価やTOPIX(東証株価指数)などが下落して儲かるベア型のETF(上場投信)を買うのがいいでしょう。

 一方、オプションでプット(売る権利)を買ったり、日経平均先物などを売る手もありますが、コストもかかりますし、期限がありますので、常に監視できる人向けです。

 この手法の考え方は、一時的には市場が間違えることもあるということです。市場がまだ発見してない変化や将来性のある会社、割安に放置されている会社、市場が業績の認識を間違えていると思われる会社などを探します。

 常に世の中にアンテナを張って情報をキャッチできる人、細かく物事を分析できる人に向いている投資法です。

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