SankeiBiz for mobile

マンション全体で電気代節約 「一括受電」と電力の「見える化」

ニュースカテゴリ:暮らしの生活

マンション全体で電気代節約 「一括受電」と電力の「見える化」

更新

高圧電力一括受電サービスの仕組み  マンション全体での電力一括契約で、各世帯の電気代が割安になる電力一括受電サービスを導入するマンションが増えている。昨年からは経済産業省が進めるスマートマンション導入加速化事業で国の補助を活用して、電力の「見える化」を図るマンションも増加。一括受電とマンションのスマート化を進めるための事業者選びのポイントを聞いた。(村島有紀)

 割安な高圧電力

 個々の世帯が契約する低圧電力(家庭用)と異なり、高圧電力(業務用)は平成17年度から自由化されている。高圧電力の一括受電サービスは、マンション内の各世帯が地域の電力会社(東京電力や関西電力)と個別に結ぶのではなく、「一括受電サービス事業者」と呼ばれる事業者が地域の電力会社とマンション全体の電力を高圧で一括して契約。事業者はマンション内外に設置した変圧器で高圧から低圧に切り替え、各世帯向けに販売する。

 サービスは、太陽光などの自然エネルギー利用と組み合わせたり、スマートメーターを設置したり、契約内容は異なる。しかし、価格は低圧電力よりも安く、事業者の管理費などを差し引いても5%程度は各世帯の電気代が安くなるケースが多い。

 16年に事業を始め、シェア35%を占める業界最大手の中央電力(東京都千代田区)の導入実績は約10万戸。昨年度からはマンション全体の省エネを進めるため、経産省が「スマートマンション導入加速化推進事業費補助金」を開始。新築、既存のマンションを含め、さまざまな業種が参入している。

 オリックス電力(港区)は昨年度、同補助金を活用し、約1万世帯の一括受電とスマート化を実施。同社の場合、サービスの「エネビスタ」で各家庭の使用電力をインターネット上で確認し、過去の使用実績に基づき、「半日お得プラン」「土日お得プラン」など電気代が最も安くなるプランを選択できる。先月からはインターフォンを使った「見える化」サービスも開始。スマートメーターが一体化した設備で、パソコンを開かずに電力の使用状況を把握できる。

 同社によると、100戸のマンションのインターフォン工事費は約1500万円だが、経産省の補助金と都が今夏に創設する補助金「(仮称)スマートマンション導入促進事業」の活用で、管理組合の負担は半額まで抑えられる見込みだ。

 一生の付き合い

 新築中心のNTTファシリティーズ(港区)も既存マンションの一括受電に力を入れる。同社の場合、新電力「エネット」から高圧電力を一括購入。独自のマンション向けの節電サービス「エネビジョン」も利用することで各世帯の電気料金を平均15%(最大38%)削減できたという。プランは、昼間が高く、夜間が安い時間帯別料金サービスなど。電力逼迫(ひっぱく)時の節電要請に応えた家庭にはその分を翌月の電気料金と提携先のショッピングモールで使えるポイントなどとして還元する。

 マンション管理のコンサルタント業務を行うマンション管理士の重松秀士(ひでお)さんは「一括受電で、電気代が一定額安くなる。ただ、サービス事業者には得手不得手があり、付帯のサービスが逆に管理上の足かせになる場合もある。一度事業者を選ぶと一生の付き合いとなり、途中で簡単に変えられない。複数の業者をよく比較し、継続性を踏まえ、検討してほしい」とアドバイスしている。

 【用語解説】スマートマンション導入加速化推進事業費補助金

 昨年4月から始まったマンションの節電に役立つ「エネルギー管理システム(MEMS)」の設備費と工事費の3分の1までを国が補助する制度。同システムは、マンション内で使用する電力を計測し、データを蓄積することで、電力使用状況の「見える化」を図り、電力使用のピークを分散したり、空調や照明の節電を呼び掛けたりして、電力使用量を抑制調整する。基金130億円のうち、昨年度中に約70億円を支出。今年度の補助対象となる同システムの設置運営事業者は29社。

ランキング