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視野ゆがみ・欠落の網膜中心静脈閉塞症 新薬2種に保険適用、治療拡大

ニュースカテゴリ:暮らしの健康

視野ゆがみ・欠落の網膜中心静脈閉塞症 新薬2種に保険適用、治療拡大

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 目の奥の静脈が詰まり、網膜の血管が水ぶくれのような状態になる「網膜中心静脈閉塞(へいそく)症(CRVO)」。有病率は40歳以上で500人に1人程度だが、失明する網膜血管障害としては糖尿病性網膜症に次いで2番目に多い。東京医科大の志村雅彦教授(眼科)に治療のポイントを聞いた。

 ある日、突然

 CRVOは加齢や糖尿病などで血液の流れが悪くなり、網膜に送り込まれた血液が静脈で詰まり、水ぶくれのような状態を起こす。突然、視界がゆがんで見えたり、一部が欠落して見えたりする。3カ月から半年で自然に良くなる人が1~2割いる一方、一度良くなっても再び繰り返す割合が高い。

 また、放置することで虚血型(動脈からの血液の流入が途絶えたり、少なくなったりする)に移行することもあり、最悪の場合、失明する。

 原因は不明だが、緑内障や加齢、動脈性高血圧、糖尿病など血流が悪いことが関係しているとされる。男女比では男性が多く、高齢者に比較的多い。しかし、若年でも突然発症する。

 志村教授は「ある日突然、見にくくなったり、ゆがんで見えたりした場合、CRVOの発症が疑われる。早期に治療を開始した方が悪化を防げる可能性が高く、治療方法も多い。できるだけ早く眼科で受診してほしい」と話す。

 眼底検査で判明

 眼科では視力や眼底検査で診断する。従来の治療法として、(1)むくみの起きている部分を焼き、それ以上進行させないレーザー治療(2)詰まった血管を開放させる硝子(しょうし)体手術(3)むくみを取るためのステロイド剤の眼球への注射治療-の3種がある。ただし、(1)、(2)は治療リスクが高く、(3)も白内障や眼圧上昇の副作用があり、軽度の視野障害の場合は治療法がほぼないのが現状だった。

 しかし、昨年8月と11月、2種の新しい治療薬「抗VEGF治療薬」が保険適用された。いずれも麻酔薬を点眼後、眼球に直接注射する。薬剤そのものに関連した副作用は少ないが、眼球組織の損傷や眼内炎、脳梗塞などの事例が2千例に1例の割合で報告されている。

 志村教授は「治療者に熟練した手技が必要。網膜疾患専門医がいて、硝子体手術ができる設備の整った病院で治療を受けることを勧めます」と話している。(村島有紀)

 抗VEGF治療薬 自己負担は1回5万~6万円

 抗VEGF治療薬は、新生血管の成長を活発化させる体内のVEGF(血管内皮細胞増殖因子)という物質の働きを抑える薬。網膜中心静脈閉塞症(CRVO)の治療薬として、昨年保険適用になったのは、加齢黄斑(おうはん)変性(加齢で眼球の黄斑部の網膜がゆがむ病気)にも用いられる「ルセンティス」(一般名・ラニビズマブ)と「アイリーア」(同・アフリベルセプト)。視力が安定するまで、ルセンティスは1カ月に1度、アイリーアの場合は2カ月に1度、それぞれ注射する。保険の3割負担の場合、1回の自己負担は5万~6万円。

 志村教授によると、一度の注射で回復する人が約20%、数年にわたって複数回の注射が必要な人が約65%、薬の効果のない人が約15%程度いるという。効果のない場合の多くが動脈の働きが悪い虚血型の患者。

 志村教授は「虚血型に移行すると網膜の血管の周囲の神経細胞が死んでしまい、回復が難しい。虚血型に移行する前に治療を開始することが大切」と話している。

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