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春闘 自動車業界の交渉、相違点や交渉のポイントは?

ニュースカテゴリ:暮らしの仕事・キャリア

春闘 自動車業界の交渉、相違点や交渉のポイントは?

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川口均氏  春闘相場に大きな影響力を持つ自動車業界の交渉が、3月12日の集中回答日に向けて始まった。好業績を背景にベースアップ(ベア)を求める労組に、経営側がどこまで応えるかが焦点だ。自動車総連の相原康伸会長と、日本自動車工業会の川口均労務委員長に、相違点や交渉のポイントなどを聞いた。

 □自工会労務委員長・川口均氏

 ベア「簡単に決まらない」

 --春闘が始まったが、どう臨んでいるのか

 「自動車は足元の国内市場については好調だ。長く続いたデフレから脱却するためにも賃金改善は必要とされる。前向きにとらえたい。好業績は、円安効果だけでなく、現場の努力によって実現できたことも理解している。高収益体質を作った従業員に対して前向きに賃上げを考えねばという意識はある」

 --労組のベア要求を受け入れるということか

 「議論しているところだ。どんな要求でも受け入れるわけではない。ベアだけでなく、一時金、年棒の改訂もある。ベア実施となれば、年金や保険などもあがり負担は大きい。慎重に判断していく部分はある。議論としては、積極的な要素を勘案しつつも、競争力維持の観点も踏まえて、しっかり見定めようとの議論になっている」

 --自動車各社は3500~4000円のベアを要求している

 「色々な数字を合わせると個々人単位では2%近い賃金上昇になる。従来に比べて改善分は高いというのが実感だ。個社単位でいってもこのレベルはかつてない。リーマン・ショック以降は、むしろ賃下げというムードすらあった。それだけに、簡単に決まらない部分がある」

 --非正規社員の処遇改善なども要求された

 「雇用形態に違いはあるが、同じ働く仲間として気持ちよく働いてもらった方が、業績にもプラスになる。正規雇用に切り替える動きも出ている。世の中で考えられるような悲惨な状況ではない」

 □自動車総連会長・相原康伸氏

 雇用安定が好循環の基礎

 --ベアに相当する賃金改善を要求したが、交渉の状況は

 「経済を再生し、所得環境を改善するという目的に向け労働組合が何ができるか、その一翼を担おうという強い危機感が賃上げ要求の狙いだ。現在、経営側は経済環境、企業の置かれた状況を、労働組合は要求の根拠をそれぞれ出しあっている段階だ。中盤から終盤に向け、交渉を追い上げていこうと各労組と再確認したところだ」

 --経営側と意見の相違はあるのか

 「経済を好循環させるという部分は一致している。ただ、その方法や手段は賃金引き上げだけでないというのが経営側の言い分だ。われわれは、雇用、労働条件が安定していくことが、基礎となると主張している。今回の好業績は円安効果が大きいとされるが、労働の質的向上がなければ実現しなかった。しっかり報いるべきだと訴える」

 --ベアを実現することの意味合いは

 「経済を巡航速度で再生軌道に乗せられるかどうかは、労働環境の改善にかかっている。そのことを労使ともに発信するべきだ。雇用の安定のみならず、次の世代のためにも豊かな労働市場を作って行くべきで、今回はその第一歩との位置づけだ」

 --一部では、ベア要求額が低いとの指摘もある

 「永年にわたる景気低迷でも定期昇給が続けられてきたのも事実で、経営が不安定になるようでは意味がない。ベアは今後も血のにじむような原価改善を続けていくという覚悟を持った要求で、その意味は重い」

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