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さらば!ジャンボ「B747」 苦楽を共にしたベテラン整備士、惜別の思い

ニュースカテゴリ:暮らしの仕事・キャリア

さらば!ジャンボ「B747」 苦楽を共にしたベテラン整備士、惜別の思い

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 「ジャンボ」の愛称で親しまれたボーイング747型機(B747)が今年3月、日本の空から姿を消す。一度に500人以上の大量輸送を実現した2階建ての花形機種。航空ファンらの間で引退が惜しまれる中、「巨体」を支えてきた整備士からも惜別の声がもれる。「最後はゆっくりと見送ってやりたい」。国内で唯一、3機のジャンボを保有する全日空の伊藤鉄夫主席整備士(60)が苦楽を共にした“相棒”への思いを語った。

 《伊藤さんは工業高校卒業後、昭和47年に整備士として全日空に入社。「先輩が就職した航空業界がおもしろそうだった」というのが理由だった。現場で整備業務にあたった約26年間のうち、大半をB747に費やし、B747担当教官として若手整備士の育成にも携わった》

 --B747は全長約70メートル、全高も約20メートルで機種の中では最大級。整備士として巨大な航空機のどこに魅力を感じたか

 「やっぱりエンジンかな。静かで安定感がある。整備作業で行う試運転では、従来のB737型機に比べて、エンジンをスタートさせてもコックピット内は静かで、『これでエンジンが回っているのか』と思うほど機体の振動もほとんどない」

 「さらに、エンジンをパワーアップするためにスロットルレバーを上げていくと、機体振動が少しずつ大きくなる。離陸出力に近づける点検では、エンジンの鼓動が大きな振動(揺れ)と大きな音となってコックピットに伝わり、緊張感と責任感が高められた記憶がある」

 --機体も他の機種にはない丸みがある

 「B747の機体を横から見たときの表情がいい。他の機種は横に長いだけだが、B747は機体前方が頭部のように浮き上がっており、シルエットが付いて表情があらわれる。何とも言えない魅力だ」

 --長年の整備士人生の中で、B747について楽しかった思い出は

 「印象が強いのはマリンジャンボ。成田(空港)勤務時代に同僚が機体をペイントする案を出し、実現した。当時としては画期的で、全国で注目を集めた」

 《「マリンジャンボ」とは機体をクジラに見立ててペイントした特別機。デザインのもとになったのは、公募で採用した小学6年の女児の作品だった。国内定期便で平成5年から約1年間フライトし、その後登場する人気漫画キャラクターを描いた機体の元祖になった》

 --楽しい思い出の一方で、苦労されたことは

 「B747は機体が異様に大きく、どんな作業をするにも倍の労力が必要だった。ロンドンやパリ、ニューヨークに出張して片言の英語で現地スタッフに整備を指示した体験は今でも冷や汗ものだ。整備が遅れてフライトに影響が出ることはなかったが、相手に英語がどこまで伝わったか…」

 --長年苦楽を共にしたB747はどんな存在なのか

 「人としてみると感情が入ってしまうから、そう見ないようにしている。機械なので不具合の原因を突き止めれば、ちゃんと答えてくれる。だからこそ五感をフルに使って整備するやりがいがある」

 --今年3月31日にB747が日本の空から全て引退するが、今の率直な思いは

 「整備士の立場から言えば、B747はまだ飛べると思っている。ただ、引退は時代の流れかもしれない。寂しいが、最後はゆっくりと見送ってやりたい」

 《全日空は昭和54年に国内線でB747の運航を始め、61年に開設した成田-米ロサンゼルス線に投入。同社の国際線拡大の一翼を担った。一時は47機を保有したが、経費削減の一環として燃費性能が劣る同型機の退役を今年3月に行うことを決めた。日本航空も一時は100機以上保有していたが、平成23年3月にすべて退役させた》

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