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【どこまで進む? 再生可能エネルギー】

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【どこまで進む? 再生可能エネルギー】

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波力発電のイメージ図(三井造船提供)  ■波力発電、潜在資源活用へ必要な態勢作り

 原子力発電所100~200基分の潜在資源量が賦存するとされる日本の海洋エネルギー。政府は2013年に新しい海洋基本計画を閣議決定し、海洋エネの推進などを打ち出した。コスト高や漁業権の問題などから開発は遅々として進んでいなかったが、局面は変わるのか。「日本では海洋エネ産業化の態勢ができていない」(三井造船の黒崎明・技術開発本部長補佐)との声も聞かれる。

 国内の海洋エネ開発は、波力発電については1980年代から2000年前後まで断続的に実証研究が行われたが、それ以降は大きく縮小した。潮流や海流、海洋温度差など他の発電方式もほぼ同様だ。

 そうした中で三井造船は10年、米オーシャン・パワー・テクノロジーズ(OPT)の波力発電技術の導入を決め、昨年にはNEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)の補助事業となって来年から伊豆半島・神津島から約1.5キロの沖合で80キロワット機の実証実験を始める。OPTの技術はワイヤロープで機器を係留する方式で周囲の面積が大きくなるため、浮力を大きくする空気室をつくってアンカーで係留する技術に改良。波と大きく共振するような構造としパワーも大きくした。

 三井造船の波力発電の仕組みは、フロートと呼ぶ縦約30メートルの浮体機器を波と共振させ、海面が上下すると、釣りの“浮き”に当たる部分が上下して、フロート内部にあるタービンを回して発電する。波力発電は夜間や雨天も関係ないため設備利用率は30%以上。太陽光の10%程度、風力の20%程度より高いという。

 内閣府の総合海洋政策本部は昨年、海洋エネの実証フィールドを公募し、岩手、長崎など7県・11海域が手を挙げた。特に岩手県は震災からの三陸復興の一助としたい考え。ただ「地元の関心が低く、漁業権の問題もあってなかなか開発が難しい状況だ」(黒崎氏)。

 三井造船の実証実験は期間が1年間。黒崎氏は「発電した電気を運ぶ海底ケーブル敷設への補助もない。固定価格買い取り制度(FIT)の対象でもなく、海洋エネを産業化する態勢になっていない」と指摘。その上で、海洋エネについて「プロジェクトごとのFITを導入すべきだ」と提言している。

 NEDOの海洋エネのコスト目標は1キロワット時当たり40円。黒崎氏は、波力発電のFITは「太陽光発電の初年度(42円)並みなら大丈夫」としている。

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