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「シェール革命」で台頭する米国 世界のエネルギー需給一変

ニュースカテゴリ:社会の科学技術

「シェール革命」で台頭する米国 世界のエネルギー需給一変

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シェールガス採掘のイメージ図  新型天然ガス「シェールガス」が世界経済に大きな影響を与えている。米国での生産拡大で、エネルギー需給は世界規模で変化。米政府は近く日本への輸出を解禁する見通しで、日本のエネルギー調達コストの引き下げにもつながりそうだ。「シェール革命」が世界のエネルギー事情を一変させようとしている。

 シェールガスは世界のエネルギー需給を大きく変えた。英国の石油メジャーBPの統計によれば、米国は2009年に天然ガス生産量の首位の座をロシアから奪った。米エネルギー省は20年前後には米国が天然ガスの純輸出国になるとみている。

 シェールガスの増産で天然ガスの需給は緩和。米国内の指標価格は100万BTU(天然ガスの取引で用いる英国熱量単位)当たり3~4ドルとなり、液化天然ガス(LNG)を15ドル程度で輸入している日本に比べて4分の1から5分の1程度に下がっている。

 かつて米国は天然ガスの2割をカタールからのLNG輸入で賄う計画だった。だが、シェールガスの生産本格化で、売り先を失ったカタールのLNGは欧州に流出。

 ちょうど東日本大震災後の原発停止で火力発電用のガス需要が激増した時期で、日本も余ったLNGを輸入して急場をしのぐことができた。

 割を食ったのはロシアだ。カタール産LNGの流入で、欧州のガス価格は下落。欧州への輸出量も減少し、欧州ガス市場での影響力は低下しつつある。

 このため、ロシア政府要人は今年に入り、「日本・中国詣で」を重ねている。3月には、ノバク露エネルギー相が来日し、茂木敏充経済産業相や大手商社幹部と会談し、日本市場へのLNG供給拡大を話し合った。

 輸出拠点を作るため極東のウラジオストクにLNG基地を建設し、東シベリア・サハ共和国のガス田などとパイプラインでつなぐ計画も着々と進めている。

 ただ、ロシアのエネルギー関連の専門家であるミハイル・カルチェムキン氏は「米国産LNGの存在が、ロシアの(極東での)計画の位置づけを弱めることになるのは明白だ」と指摘。

 シェールガスが日本に流入すれば、ロシアはさらに戦略見直しを迫られる可能性があると予想している。(田辺裕晶、モスクワ 佐々木正明)

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