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値上げで強まる節約志向は危険な罠か 「デフレ丼」が示す経済成長への逆風

SankeiBiz編集部
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 「お金を使わなくてもなんとかなる」

 こうした日本の消費者の節約志向には新型コロナ感染拡大がもたらした変化も影響しているようだ。博報堂生活総合研究所の三矢正浩上席研究員は、新型コロナ禍の結果として消費者の間に「お金を使わなくても何とかなる」という心理が強まったと指摘する。

 新型コロナ禍では動画配信サイトや「家飲み」が浸透し、外出してお金を使わなくても生活を楽しむことができるという認識が広がった。日本ではバブル崩壊後、ファストファッション企業や100円ショップによる安価で品質もよい商品の提供が浸透しており、コロナ禍が、節約しても満足度が下がらない生活をますます定着させた形だ。

 また、三矢氏は消費者の間では「お金を使いたくても使えない」状況もあると分析する。財務省の資料によると、国民の所得に対する税金と社会保障費の割合(国民負担率)は2021年度は44.3%となる見通し。00年代前半の負担率は35%程度だったことを考えると、お金を稼いでも手元に残らない現象が進んでいることは明白だ。さらに老後の生活や年金への不安も考えれば、「お金を使わない方がよさそうだ」というマインドもあるという。

 脱節約志向なるか

 ただ、個人レベルでは節約しながら生活の満足度を高められたとしても、経済全体の観点からみれば消費活動を金額ベースで増やしていくことも重要だ。

 岸田文雄政権が目指す経済成長と分配政策の好循環も、消費者が節約志向を強めるばかりではスタートを切れない。経済が動き始めず、税収に不安が生じるようになれば、生活困窮者への支援も行き渡らず、将来への不安の解消も困難だ。企業が値上げの決断まで続ける「コスト削減努力」には人件費の抑制も含まれ、過度な節約志向は消費者としての個人が労働者としての個人を苦しめる行為にもみえる。

 博報堂生活総研の三矢氏は、消費をとりまく「使わなくても何とかなる」「使いたくても使えない」「使わない方がよさそうだ」の3つの状況を、ひとつずつでもいいから変えていく必要があると指摘。消費者がそれぞれの生活状況を見極めつつ、「社会全体を考えてお金を使うという気持ちに切り替えていくことも大切だ」と話している。

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