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山梨に富士山ビューの展望台新設、改装相次ぐ 新たな魅力で訴求

 山梨県の自治体や企業が富士山の展望台新設や改装を進めている。新型コロナウイルス禍で観光業界は厳しい環境に追い込まれたが、感染急減によって国内の観光客が戻り始め、来年以降の訪日外国人旅行者(インバウンド)の回復も期待される。その中で、これまでにない富士山の絶景の提供やアクセスを改善することで、富士山ビューの魅力を再訴求する狙いだ。

 5分で絶景スポット

 「真正面に富士山が見えるし、裾野も広がって、眼下には河口湖。噂には聞いていたが、すごい景色が楽に楽しめる」

 10月上旬、笛吹市が新たに整備した富士山の展望台「FUJIYAMAツインテラス」を訪れた甲府市在住の60代の夫婦は驚き、富士山をバックにうれしそうに記念写真を同行者に撮ってもらっていた。

 展望台は、甲府盆地の南側のへりにあたる標高約1600メートルの新道峠に位置する。河口湖を眼下に富士山全体を山裾まで望める絶景が広がる。

 新道峠は黒岳などを結ぶハイキングコースにあり、ここからの富士山展望は登山家や写真愛好家らに人気で「知る人ぞ知る絶景スポット」だった。ところが7月、笛吹市は展望台整備と同時に展望台すぐ近くまでの無料送迎バスも用意。感染拡大防止のため一時運休したが、送迎バスは10月に再開した。ハイキングの準備がなければ来られなかった場所が、5分程度階段を上がるだけでアクセスできるようになったのだ。

 コースター上部の絶景

 富士急行も富士山と河口湖を一望できる「~河口湖~富士山パノラマロープウェイ」(富士河口湖町)の富士見台駅を大規模改装した。これまで、駅から展望場所までは急な階段道だったが、ユニバーサルデザインのスロープにリニューアルし高齢者やベビーカーでも利用できるようにした。

 テーマパーク「富士急ハイランド」(富士吉田市)も7月に高さ55メートルの展望台「FUJIYAMAタワー」をオープンした。ジェットコースター「FUJIYAMA」の点検塔の役目もある新施設の屋上を展望フロアにした。

 FUJIYAMAのこの地点が富士山の絶景ポイントであることは、コースターのファンの間では知られていたが、実際にはコースターの高さとスピードで、じっくり眺めることはできず、高齢者などコースターに乗れない人も多かった。そういった人たちもエレベーターで昇るだけで、富士山の絶景を楽しめるようにした。ハイランドの入場は無料で、同タワーの料金だけで絶景を見られる。

 富士山と五重塔と桜

 富士山と五重塔「忠霊塔」と、季節によっては満開の桜と、日本を代表する光景を一度に体感できるとしてインバウンドの絶大な人気を誇る新倉山浅間(あらくらやませんげん)公園(富士吉田市)も、現在リニューアル工事中だ。

 桜の時期には観光客が殺到し、写真を撮影のために行列ができ、展望デッキでは身動きが取れなくなることもある。今回の改修で、人の流れをスムーズにし混雑を緩和する。来春に工事完了予定で、桜のシーズンには多くの観光客が集まることになりそうだ。

 現在、新型コロナの影響で国内の観光客が大きく減少しているが、関係者は、感染が収束すればインバウンドが殺到し、富士山は有力な観光コンテンツとして再び注目されるのは間違いないと確信している。

 特に富士山の絶景を、これまでよりも簡単にアクセスできるようにすると同時に富士山以外の観光も楽しんでもらうことを狙う。笛吹市では市内の温泉街である石和温泉と「FUJIYAMAツインテラス」の両方を楽しむことなどを訴求して、相乗効果が出ることを期待している。

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