オタク文化は奥深く、例えば「萌え」という概念も一言で説明するのは難しい。最近は「萌え」ではなく「推し」という言葉が多用されるようだが、いずれにしても、事情に精通していない者が「オタク」向けの商品を開発するのはハードルが高い。商品化できたとしても「オタク」の人たちのニーズに合わないケースもあるに違いない。
ビジネスパーソンならではの部活動
「推ししか勝たん」「神」「最高かよ」…。「推し文字」と呼ばれる推しへの思いを表現した手書き風のメッセージを爪に施すことができる商品「ときめく推し文字ネイルシール」を開発したのは、フェリシモのファッション事業部主任、皆川絵利奈さん。キラキラした推し文字をデザインしたジェルネイル風のネイルシールはゴールドとシルバーの2種類。好きなアイドルとの握手会などに「推し文字」を施したネイルで臨み、ファンとしても「推しに愛を伝えることができるし、自分も気合を入れることができる」(皆川さん)。アイドルファンを中心に人気を集めているという。
就業時間内の活動。それは部活動なのか、あるいは業務の一環なのか。フェリシモによると、部活動は事業性、社会性、独創性の「3つの和」が重なる場を目指しているという。「好き」を「カタチ」にできれば、それだけ情熱をもって取り組むことができる。さまざまな趣味を持つ社員の部活動から、新しい事業の芽がボトムアップで創出される可能性があるというわけだ。「小さくスタートして、大きな事業につなげることもできる」(山川さん)のはやはり、ビジネスパーソンならではの部活動といえそうだ。
商品開発や広告に関わる部分は利益を出すことも目標にしているが、リスクを抑えるため、商品のロット(取引単位)を小さくしたり、SNSで広告したりといった工夫をしている。山川さんは「上から『やりなさい』と言われてやっているわけではないので前向きに取り組める。好きだから『やりたい』と思える」と部活動に満足している様子。あくまで部活動ではあるが、商品化にあたり困ったことがあれば、会社がサポートする態勢も整っているという。
中島さんはこう強調する。
「会社が事業計画を立てて商品の開発をしようとすれば、ビジネスとしてのうまみを最初から見つけ、トレンドに合わせて当て込むことも必要になる。さまざまな制約もある。しかし、部活動ならボトムアップで新しいイノベーションも生まれてくる。そこが一番いいところだと思う」
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