消費者庁は決して家庭だけを“狙い撃ち”にしたいわけではない。ただ、「一昨年10月に食ロス法(食品ロスの削減の推進に関する法律)が施行されて、国や自治体と事業者が連携できるようになりましたが、家庭に対しては呼びかけにとどまっているのが現状」(環境省環境再生・資源循環局総務課リサイクル推進室)という苦悩がある。
事業者に食品ロス削減の対応を求めることはできても、一般消費者の台所に入り込んで食卓を変えさせることはできず、実効性の高い施策を打つのは難しい。実は2012年以降、食品ロスの量は減少傾向にあるが、「人口減少にともなって、ごみ全体の総排出量が減ったことが影響した」(同省のリサイクル推進室)ということが分かっているだけで、具体的な理由は判然としない。近年は社会全体でSDGs(持続可能な開発目標)の推進に取り組み、食料を無駄にしない姿勢が強まっていることについても、食品ロス削減への貢献の程が分かるのはこれからだ。
糸口が見つからなくても
昨年は新型コロナウイルス感染拡大や緊急事態宣言を受け、外出自粛やデリバリーの普及といった買い物をめぐる環境の大きな変化があったが、環境省の調査では家庭での食材ロスの量・頻度については約90%の人が従来と変わらなかったと答えている。
家庭の食品ロス問題を解決する糸口は見つけにくく、対策は消費者に意識向上を求めるものになりがちだ。食ロス法は10月を「食品ロス削減月間」、同月30日を「食品ロス削減の日」と定めており、消費者庁は今年、料理好きで知られるお笑いトリオ・ロバートの馬場裕之さんをアンバサダーに起用するなどして食品ロス削減の認知度向上を目指している。道のりは険しくとも、ポスターのような生活に密着した取り組みや、著名人の全国的な知名度を生かした広報などで一歩ずつ進んでいくしかなさそうだ。
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