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イカの漁獲量が20分の1に…函館が直面する危機に「ブリ」は救世主となるか

SankeiBiz編集部
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 地元から「ブリ食文化」の定着を

 かつてないイカの不漁にあえぐ函館では、「ブリ食文化」を地元に根付かせようという動きも始まっている。推進するのは市の任意団体「はこだて海の教室実行委員会」。日本財団「海と日本プロジェクト」の一環として、ブリを使ったご当地グルメや新商品の開発が進む。

 その第1弾として、昨年開発されたのが「函館ブリたれカツ」だ。ブリ特有の臭みを消すため牛乳に漬け込むなどの処理を施し、食べやすく仕上げたという。学校給食やキッチンカーでの販売、イベントなどを通じてPR活動を展開したところ、「SNSで知っていたので、やっと食べられた」「函館の海でブリがたくさん獲れていることを知る機会になった」といった地元の反応も上々だった。真昆布のペーストなどブリ以外にも地元の食材を取り入れており、若者にも好評を博している。

 今月1日から31日まで市内で開催されている「函館ブリフェス」では、この「ブリたれカツ」を使ったハンバーガーのほか、第2弾として「函館ブリ塩ラーメン」も出品。ラーメンの出汁に使われているのは新開発の「ブリ節(ぶし)」だ。市内にブリ節を製造できる工場がないため、世界自然遺産の知床を望む羅臼町に本社を構える企業に製造を依頼。「北海道産」として来年以降の販売に向けて試作中だという。

 イカに代わる“名物”としてのブリの可能性について、同会事務局の國分晋吾さん(39)は、「ブリは汎用性が高く、アレンジのポテンシャルが高い。臭みがあるイメージを変え、新たな食文化として広めていきたい」と意気込む。

 函館では、ブリの燻製やブリフレークなどの商品開発も進んでいる。とはいえ、地場産業はイカがベースとなっており、ブリに舵を切るのは容易ではない。イカが獲れなくなった今も、海外からイカを輸入して加工業を続けている業者も少なからずいるという。

 函館が地元を挙げて「ブリの町」となる日は来るのか。渡島総合振興局の榊原さんは強調する。

 「多くの加工業者が急な転換を迫られ、困惑している。それでも、努力しながら(ブリへの転換に)取り組み始めたところだ」

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