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「今年の桜が最後になる人も…」高齢者施設で“世界一周” オンラインで実現へ

SankeiBiz編集部
SankeiBiz編集部

 新型コロナウイルスの影響で自粛生活が続く中、高齢者福祉施設で旅行気分を味わえる「オンラインツアー」が人気を集めている。桜の名所の映像を眺めながらお花見弁当に舌鼓をうつといった映像とリアルの「ハイブリッド(複合)体験」ができるのも特徴だ。健康上の問題や経済的な理由で旅行できない人も少なくなく、高齢になるほど旅行を控える傾向にあるとされる。安価で手軽に楽しめるオンラインツアーは今後、高齢者にとって貴重なエンターテインメントになる可能性を秘めている。

「高齢者は来年まで待てない」

 「僕らは来年まで待てますが、高齢の方の中には、来年まで待てないという人がいます。高齢者にこそバーチャルで旅行が楽しめるオンラインツアーが必要と考えました」

 こう語るのは、介護関連の商品やサービスの開発・販売を行っている「ハンディネットワーク インターナショナル」(大阪府)社長の春山哲朗さん(35)だ。昨年3月、感染状況を伝えるニュース番組のキャスターが「今年は自粛して、来年お花見を楽しみましょう」と視聴者に呼びかけていた。「今年の桜が最後になる高齢者もいるのに…」。そう思った時、高齢者向けにオンラインツアーを始めようと心に決めたという。

 全身の筋肉が萎縮(いしゅく)する進行性の難病「筋ジストロフィー」だった父親で創業者の満さんから会社を引き継いだ春山さん。「父は首から下が全く動かないという重度の障害者でしたが、年に何度も家族旅行に連れて行ってくれました。7年前に60歳で他界した後、あの旅行の思い出が家族を支えていると気づきました」と振り返る。

 満さんとの思い出を胸に、2015年に介護が必要な高齢者らを対象にした旅行事業を立ち上げた。事業は軌道に乗り、毎年1000~2000人の高齢者が利用していたが、昨年来、コロナ禍で全てキャンセルになっている。それだけに、オンラインツアーは「高齢期の新たなエンターテインメントになるのでは」と直感した。

 「お花見といえば、桜の木の下でお弁当を広げ、家族や友人らと談笑するというイメージがあります。コロナ禍で実現できないのは、桜の木の下に行くということだけです。そこで桜の映像を提供し、施設内でお花見弁当を注文してもらえればご入居者の皆さんで談笑しながら『バーチャル花見』ができると思ったのです」

 昨年4月初旬から桜の開花状況を確認しつつ、映像制作会社に依頼し関西の桜の名所5カ所で撮影を実施。同13日には同社のYouTube(ユーチューブ)チャンネル「Good Timeチャンネル」で配信を始めた。このバーチャル花見は好評を博し、入所者の家族からも「お父さんのこんな元気な姿を見たのは久しぶりです」など感謝の言葉が相次いで寄せられた。

 療養中のため屋外で季節を感じることができない高齢者もいる。春山さんは「外出できなくても日本の素晴らしい四季折々の映像を見て季節を感じてもらいたい」とオンラインツアー事業に注力することにした。

 しかし、YouTubeで無料配信するだけでは売り上げが見込めず、当然、サービスの予算計上もできない。1本あたりの映像制作費は30万~50万円。事業として見通しが立たなければ、これらの費用を捻出することも難しい。

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