東京大学の「知」と吉本興業の「エンターテインメント」を掛け合わせた「笑う東大、学ぶ吉本プロジェクト」のコンテンツの一つ、SDGs人材交換留学「漫才ワークショップ」が10日、東京・新宿の吉本興業東京本部で開催された。わずか1日の講義で漫才の作り方を学び、“ネタ披露”までこなした学生に、講師を務めたお笑いコンビ「NON STYLE」の石田明さんは「さすが東大生、飲み込みが早い」と絶賛。「漫才は『話す・伝える』ためのコミュニケーションスキル。今日学んだことを今後の学生生活や社会人生活に生かしてもらえたら」と語った。
漫才を学び、実践
プロジェクトの第3弾では、学生が異なる文化や価値観に触れるプログラムとして吉本興業が持つさまざまなメディア、コンテンツ、プロジェクトに参加する3つの「体験活動プログラム」を展開する。その一つ目となる「漫才ワークショップ」では、これまで漫才の経験がない学生15人を相手に、タレント養成所「吉本総合芸能学院」(NSC)で講師を務める石田さんが、漫才の作り方などについて講義した。
漫才ワークショップでは、学生同士でコンビを組み、ネタ作りに挑戦。東大卒の吉本興業社員1人が助っ人として参戦し、8組がステージで漫才を順番に披露した。取材に集まった報道陣がステージにカメラを向けるという本番さながらの環境で不安気な表情を見せる学生に、石田さんが「大丈夫! 不祥事起こしたらこんなもんじゃないねん」と言って会場の笑いを誘い、緊張をやわらげる場面もあった。
東大生の漫才に、石田さんは「堂々としている」「話の組み立て方がプロっぽい」と感心。各組の発表が終わるたびに「客席を引き込むような語り口調が良い」などと具体的に評価した。
最後に「自分なりの組み立て方がしっかりしており、ちゃんと表現まで落とし込めていてすべて面白かった。こういう場合、半分くらいネタが飛んで気まずくなりやすいが、全組全部発表できたというのが感動した」と総評した。
最も面白かったコンビを表彰する「石田賞」は、大島凛太朗さん(1年生)と野口賢太郎さん(同)のコンビ「39(サンキュー)太郎」に贈られた。石田さんは「全組面白かったから難しい」と迷いながらも、共感を呼ぶシニカルな笑いで「後ろの取材陣の心をつかみ、会場の空気を変えた」と39太郎の2人を選んだ理由を説明した。
「面白く伝える」を全力で考える
東大生への講義を終えた石田さんは「さすが東大生、飲み込みが早い。『ここが大事』というところの反応が良かった」と感じ入った様子。「東大生って頭が固い人が多いのかなと思っていたが、隙間があるというか、人の話を聞ける。こういう人がうまいこと吸収して伸びていくんやろうなと思った」としみじみと語った。
石田賞を受賞した野口さんは「人を笑わせるとか、プレゼン能力をここまで意識したことはなかった。漫才を練習した1時間でそういう力がつけられたように思う」と振り返った。
ワークショップに参加した山川周祐さん(1年生)は「聞き手とつながることが大事ということや、自分が面白いと思っていても相手に共感されなかったら伝わらないと感じた」といい、「『常識を保つことが大事』という石田さんの言葉が印象的だった。ネタ作りは難しかったが、生きていく上で自分の思いを伝える能力は大事だと思うので、とても貴重な経験になった」と話した。