早くも2022年新春の「おせち」商戦が始まった。コロナ禍で迎える2度目の正月を彩るごちそうを提供しようと各社が知恵を絞るなか、大手百貨店の高島屋が「SDGs(持続可能な開発目標)」をテーマにしたお節料理を拡充する。いまや環境に配慮した製品は少なくないが、SDGsが知られるようになる前から“サステナブルおせち”を販売していた同社の先見性が際立っている。
「高島屋のお客様は40代以上の方が多いのですが、幅広い年代の方にも関心を持ってもらえるように企画しています。しかし、今年が初めてというわけではないのです」
同社の広報担当者はサステナビリティー(持続可能性)を意識したお節料理についてこう説明する。
「高島屋 未来にやさしいおせち 和二段重」(税込み2万3760円)の鯛西京焼は、ジュースを作る際に残る伊予柑の皮から抽出したオイルを混ぜて育てた真鯛が食材。焼き豚は、商業施設の余剰食品を飼料に有効活用して育てた豚を使っている。また、重箱の中のプラスチックカップを紙製に変更し、プラスチック使用量を昨年の商品と比較して約20%減らす工夫もある。
2015年9月の国連サミットで採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」に記載されたSDGsには、平和やジェンダーの平等といった17の目標がある。高島屋のおせちは、持続可能な生産と消費(目標12)や海洋・陸上資源の保全(目標14と15)などに取り組んだものといえる。
実は、SDGsが設定される前年の2014年には、環境配慮と資源保護をテーマにしたコンセプトの「未来にやさしいおせち」が関西の高島屋で販売されていた。近畿大学が世界で初めて完全養殖に成功したクロマグロ「近大マグロ」の稚魚を養殖した愛媛県宇和海の本マグロや、植林活動で海と山の浄化に取り組む北海道厚岸町の牡蠣(かき)などが食材だったという。
このときは「ヒット商品にはならなかった」(同社広報)が、世間の環境意識の高まりを受けて昨年再販売され、今年は「地球にやさしいおせち 一段」(税込み1万6200円、ウェブ・通販限定)がラインアップに加わった。こちらは山の生態系を守るために処分されたシカとイノシシのジビエ肉で作ったソーセージやハンバーグ、フードロス削減で規格外野菜を使った筑前煮などを堪能できる。
「小学校の授業でもSDGsを学ぶ時代になりました。親子の会話がはずむきっかけになってほしいと思います」(同社広報)
正月が、地球規模の課題についておいしく楽しく学ぶチャンスになるかもしれない。