話題・その他

アフィリエイターに措置命令も 改正薬機法で違反広告に課徴金、8月施行

SankeiBiz編集部
SankeiBiz編集部

 医薬品などの不正確な広告に対して課徴金を課すことを定めた改正医薬品医療機器法(薬機法)が8月1日、施行される。同法では虚偽・誇大広告の罰金を最高で200万円としてきたが、収益の大部分をまんまと“持ち逃げ”されるケースに対応する。インターネットで広告料を稼ぐ「アフィリエイター」への処分も重くなるとみられ、化粧品や美容機器、医療機器、健康食品などをめぐる“不正広告包囲網”は狭まりつつある。

 改正薬機法では、広告違反の課徴金の額は最長3年までさかのぼった売り上げの4.5%と決められた。広告違反に関する法律には景品表示法もあり、こちらの課徴金は3%。同じ案件では景表法の課徴金の分が控除されるため、改正薬機法での実質的な支払額は1.5%ととなる。また、課徴金の額が225万円未満の場合は対象外だ。

 議論を呼んだのが、違反広告で課徴金を支払うことになるのは誰か、という点だ。薬機法の第66条では「何人も、医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器又は再生医療等製品の名称、製造方法、効能、効果又は性能に関して、明示的であると暗示的であるとを問わず、虚偽又は誇大な記事を広告し、記述し、又は流布してはならない」と明記されている。

 「何人」(なんぴと)というからには製造販売の業者はもちろんのこと、テレビや新聞などの広告に携わるメディア、ブログのアフィリエイト広告で収益を得る個人、SNSや動画サイトで強い影響力を持つインフルエンサーまでもが対象になるのではと動揺が広がっていた。だが、厚生労働省の医薬・生活衛生局監視指導・麻薬対策課の担当者はこう指摘する。

 「課徴金は『医薬品等の対価の合計額』(第75条の5の2)をもとに計算する。広告は『医薬品等の対価』とは別なので、広告を掲載しただけの新聞や雑誌に対して課徴金命令が出ることはない」

 課徴金の対象となるのは製造、卸、販売など、問題になった商品の取引に関与した業者に限られるのだという。

 それでは、違反広告を掲載したメディアへのペナルティーは変わらないままなのか。ここが分かりにくいところだ、と担当者は声を曇らせる。

 「新設の課徴金制度ばかり注目されているが、同法72条の5が部分的に改正されて、違反広告を掲載したことに対して中止命令より強い措置命令が出るようになった。新聞であれば、広告の内容が不確かだったことを読者に伝える社告を掲載するといった対応が求められるだろう」

 改正によって同法72条の5の効力が及ぶ範囲が広がっており、違反広告に関わったアフィリエイターやインフルエンサーを含む「何人も」措置命令を受ける可能性があるという。

 近年のインターネット広告は仕組みが複雑化しており、サイト運営者が気付かないうちに不適切な広告が表示されることも少なくない。気象庁は昨年、ホームページに広告を掲出する取り組みを開始したが、ブランド品の安売りや実際以上の効果をうたうヘアケア用品などの広告が表示されてしまうトラブルに見舞われた。同庁は広告掲載をすぐに中断し、規制を強化して今月から再開している。

 こうしたケースでも「広告掲載の契約もあるので一概に言えないが、サイト運営者に措置命令が出ることは考えられる」(担当者)。副収入を得る手段としても注目を集めるインターネット広告だが、改正薬機法施行後はなお一層の注意が必要だろう。

SankeiBiz編集部
SankeiBiz編集部 SankeiBiz編集部員
SankeiBiz編集部員が取材・執筆したコンテンツを提供。通勤途中や自宅で、少しまとまった時間に読めて、少し賢くなれる。そんなコンテンツを目指している。

Recommend

Biz Plus

Ranking

アクセスランキング