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柴犬の写真「Doge」4.7億円で落札 NFTチャリティーで“なりすまし”に対抗

SankeiBiz編集部
SankeiBiz編集部

 インターネットの世界で「Doge」(ドージ)の名で親しまれる柴犬、かぼすちゃん(15歳、メス)の写真データがNFT(非代替性トークン)のチャリティーオークションに出品され、4億円以上の値で落札された。飼い主も「頭の中は真っ白になり、『嬉しい』ではなく『恐ろしい』という思いが湧き上がりました」と驚きを隠せない。ブロックチェーン技術を使ってデジタルデータを“一点物”にするNFTのブームが過熱し、米国出身のデジタルアート作家「ビープル」ことマイク・ウィンケルマンさんの作品が約6930万ドル(当時約75億円)で落札されるなど入札価格が高騰している。ただ、バブルのような状態に制度の整備が追いついておらず、飼い主が関与しない「Doge」の写真データが複数のNFTオークションサイトに掲載されていたこともSankeiBiz編集部の取材で判明した。

世界をめぐった「Doge」

 ソファーの上に座り、何か言いたそうな表情で視線を送る可愛らしい柴犬。飼い主でブロガーのかぼすママさんが2010年2月にブログ「かぼすちゃんとおさんぽ。」で公開した写真が、インターネットの歴史に残ることになるとは誰も予想できなかっただろう。

 元保護犬のかぼすちゃんはペット愛好家の間では有名で、カレンダーや書籍などが販売されているアイドルだ。だが、海外では少々事情が異なる。米国の掲示板サイトなどで2013年頃から、この写真にカラフルな文字でセリフを書き込んでユーモアを競うコラージュが、「ネットミーム」(ネットの面白ねた)として大流行したのだ。

 一連のミームは「Dog」のつづりを崩した「Doge」というスラングで呼ばれるようになり、米ABCニュース(電子版)の「2010年代のネットミーム10選」に選ばれている。ミームにちなんだ仮想通貨「Dogecoin(ドージコイン)」まで作られた。公式サイトには「世界中の柴犬に愛されている仮想通貨」と冗談のようなことが書かれているが、電気自動車大手テスラの創業者、イーロン・マスク最高経営責任者(CEO)が好意的に言及した後に価格が高騰したこともある。

本人を騙る不穏な動きも

 かぼすママさんの周囲が騒がしくなったのは、今年の2月ごろ。海外から「一緒にNFTを作りませんか」という趣旨のメールが何通も届くようになった。

 「私の名前を使って勝手にNFTを売ろうとする人達が現れるのではないか、放っておいたら次々と詐欺のようなことが起きてしまうのではないかと恐怖を感じました」と振り返る。かぼすママさんの名前を騙(かた)るTwitterアカウントがNFTオークションをほのめかす投稿をしていたこともあり、不安が募ったという。

 SankeiBiz編集部の調べでは、今月15日時点(日本時間)でかぼすママさんが関与しない「Doge」の写真データが複数のNFTオークションサイトで確認できた。オークション参加者らに“なりすまし”を見破られたためか、まったく入札がなかったり、少額の入札しかなかったりという状況だったが、新興マーケットでは出品者の身元確認が徹底されていないという課題があるようだ。勝手に作品を売られる被害の懸念もあり、実際、素性不明の芸術家バンクシーの作品のNFTアートが販売され、バンクシー側の公式販売と思い込んで買ってしまった人がいるとの事例も報告されている。

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