ベンチャー支援の好サイクル確立 慶応イノベーション・イニシアティブ社長 山岸 広太郎さん(45)
--足元のベンチャー企業への投資環境は
「昨年立ち上げた2本目のベンチャーファンドも目標としていた100億円超の資金が集まった。リスクマネーの供給自体は思ったよりも落ちてはいない。とはいえ、リスクマネーの規模で、日本は米中よりも段違いに小さいことは課題だ」
--慶大がベンチャーキャピタル(VC)を手がける意義とは
「大学は教育機関であり研究機関でもあるが、その成果を社会に還元することでさまざまな課題の解決に役立ててほしいと考えている。優れた成果を具現化できるように資金と人を投じ、きっちりとリターン(配当)を出す。そのリターンを元手に新たなベンチャー企業への支援にあてるというサイクルを作りたい」
--質の高い研究成果があることは、将来性が高いベンチャーが生まれる可能性が高く、機関投資家にとって魅力的だ
「昨年12月、創薬ベンチャーのクリングルファーマが投資先として初めて株式上場にこぎつけた。今年は3社、来年も数社の上場が見込める」
--大学のVCというと、その大学に何らかのかかわりがあることが投資先の条件となる
「先ほどのクリングルファーマは慶大と大阪大との共同研究の成果を具現化したものだ。大学の研究は非常に専門性が高い一方、細分化されている面もある。慶大の研究推進連携本部と協力しながら、他大学とのジョイントベンチャーにも目を向けたい」
--投資を通じてどんな世界観を作りたいか
「ITと医療を投資の重点分野に置いている。投資先のベンチャー企業の活躍で、誰もが健康で長生きできる社会を目指したい」
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やまぎし・こうたろう 慶大経卒。1999年日経BPに入社。パソコン雑誌の編集やウェブ媒体の開発に従事。2003年シーネットネットワークスジャパン(現朝日インタラクティブ)の設立に参加し、「CNET Japan」初代編集長。04年グリーを共同創業し、副社長。15年12月慶応イノベーション・イニシアティブ社長。神奈川県出身。